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子供たちのため大阪にモスク建設を目指すインドネシア人事業家

大阪・大国町でモスク建設を目標に掲げ、7億円もの巨額の募金活動をおこなっているインドネシア人ムスリム(イスラム教徒)のヘリザル(Herizal Adhardi)さん。COOP JAPAN株式会社のCEOを務め、事業家としても活躍する彼は、これまでに貿易、人材紹介業、小売業と事業領域を拡大してきました。

日本に来る切っ掛けと日本の好きなところ

ヘリザルさんが初めて日本に来たのは23歳の時。その切っ掛けの1つは中学時代に遡ります。
ボーイスカウトをしていたある日、日本から帰ってきた友人の先輩が、「日本は実に素晴らしいところだったんだ!」と、興奮気味に数々のエピソードと共にお土産話を聞かされました。それ以来、その人伝えに聞いた日本の街並みや習慣、文化などに思いを馳せていたと言います。

そして実際に日本の地に降り立ってみた当時を回顧してもらったところ、「本当にそうだった」「しかも道路が光っていたのがビックリしました」と懐かしみながらも笑顔で答えてくれました。
ちなみにその後日談として、東京で道路工事を請け負う会社へ見学に行く機会があり、その様子を見ていると、アスファルトを舗装する際にガラス片を混入させていることが分かり、納得したんだとか。

そして来日して一番感動したのは、「日本の文化」だったと言います。中でも特に驚いたのは、「日本人は本当に皆ちゃんと挨拶をする」ということ。買い物する時でも「ありがとうございます」と挨拶をするのが実に素晴らしく、「他の国には見当たらない行為だと思う」と語ってくれました。

そして日本らしい食べ物としてはやはり「寿司」が好きで、中でも一番好きなネタはサーモンなんだとか。サーモンはヘリザルさんだけでなく、外国人観光客の中でも特に人気のネタとして知られています。
来日してしばらく、実はヘリザルさん、「寿司ネタの生臭さが苦手で、最初の頃は熱湯を掛けてから食べていた」との告白。当時その様子を見ていた日本人の友人たちに「なんだか奇妙な食べ方してるね!」と指摘されて以来、何とか生で食べれるようになったんだとか。今となっては、寿司は大好きな日本の料理になっているそうです。

そして一方でムスリム特有の問題もあったと言います。それはやはり「ハラール」の問題です。当時は今と違って「ハラール醤油」なるものが無かったので、寿司ネタを生姜と一緒に食べるなどの工夫をして、魚介類ならではの生臭さを取り除くようにして食べていたそうです。

人材の紹介先を示す日本地図。成約に至る度にマークを付けています。

日本での仕事内容

急速な少子高齢化に突入し、労働・消費の両面において、人手不足が社会のあらゆるシーンで深刻な問題となってくることに目を付けたヘリザルさん。2015年には人材紹介事業のライセンスを取得し、母国インドネシア人の技能実習生を労働力不足に悩む日本企業へ紹介する事業に乗り出しました。
紹介先は製造業を中心に農・水産業、建設業、工事現場など。母国で高校を卒業した若者に3,4ヶ月日本語を勉強させてN4, N5を取得。そして彼らが日本の労働力として活躍するよう、日本企業との間で橋渡しをおこないます。こうした取り組みはこれまでに北海道から九州に至る日本全国に1,500名の実績を持つと言います。

事業の拠点となっているのが大阪府泉南市にある事務所。
ヘリザルさんによると、関西空港からほど近く、大阪・和歌山方面の大学へのアクセスや、家賃も安く、農水産関係の仕事も多いことから、ここ泉南市周辺にはインドネシア人ムスリム100人以上が住んでいるのだとか。
そのため、事務所はハラール食材を販売する店舗も兼ねています。

事業が多角化する中で多忙な毎日を送るヘリザルさん。経営者なので決まったお休みは設定していないものの、1週間に1度は必ず休みを取るようにしています。
パワフルに仕事をこなす彼の原動力となっているのは愛する家族の存在。インドネシア人の妻と7人の子供たちを連れて外食するのが休日の日課であり、至福の時間だと語ってくれました。

子ども7人というのは、現代日本人の感覚からするとかなりの子だくさんですが、インドネシアではそれほど珍しいものではないのだとか。事実、ヘリザルさん自身も6人兄弟の5番目で、彼の親の世代ともなれば、20人超え(?!)も普通にあったそうです。

大阪・大国町にモスク建設を目指す7億円の募金活動を始動

ヘリザルさんによると「関西在住のムスリムは6,000人ほどで、インドネシア・マレーシアでみても5,000人程度はいる」とのこと。
また「大阪マスジッドを例にしても、金曜の礼拝やラマダン明けイードのお祈りに至っては、何千人ものムスリムがそこに集まり、すでに飽和状態になっている」とし、大阪、しかも利便性の高い大阪市内での新たなモスク建設に必要性がある理由を語ってくれました。

そして大阪市内の中でも具体的な場所として大国町を設定し、モスク建設のプロジェクトを立ち上げたのは1年半前。これまでに一般社団法人化を終えて、自身がその理事長という要職に就任したのも束の間、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が始まり、あらゆる側面で計画の変更を余儀なくされました。
このコロナの影響によって、人を集めての活動ができなくなった他、経済的な余裕を無くなってしまう人が多発したことにより、募金活動のうまく進まない状況が今なお続いています。

参考イメージとして、建設予定地周辺の様子

今回のモスク建設プロジェクトは、地価の高い大阪市内であるのに加えて、近隣住民に迷惑を掛けないためにも、最低でも7台以上の駐車スペースを確保したいことから、その設定金額は実に「7億円」と高騰しています。
しかしコロナ禍の影響を受けながらも、これまでに2,000万円を超える寄付が集まっているとのことです。

またヘリザルさんによると、大阪にモスクを建てるもう1つの理由として「第2世代ムスリム」の存在があるとのことです。
大阪府内でもインドネシア、マレーシアンムスリムが日本人と結婚する事例が増加。これら夫婦の間に生まれた子供たちは第2世代ムスリムとして育ってきました。
「この子供たちにもイスラムの教えを学べる場所を提供したい」「コミュニケーションを図れる場を持ちたい」。こうした思いは、自身も7人の子を持つ父であることから強くなり、また周囲からの後押しもあってプロジェクト立ち上げを発起するに至ったと語ってくれました。

日本・日本人への感謝と、日本に住み続けたい思い

既にこれまでの人生の半分近くを日本で過ごしてきたヘリザルさん。
「両親はインドネシアにいるけど、もうずっと日本に住みたいと思っているんだ」「インドネシアに帰国すると、早く日本に戻りたいと思ってしまう(笑)」と語り、生まれ故郷ではなく、死ぬまで日本に住み続けたいと言います。

「外国人である我々ムスリムが、日本で平和に暮らせていることに本当に感謝しています」「私たちを温かく受け入れてくれている日本・日本人に対しては感謝しかない」
インタビューの席でヘリザルさんは幾度となくこうした言葉を発していたことが印象的でした。

そして「だからこそ我々在日ムスリムは、日本国内でのルールを守らなければならないし、日本・日本人に対してムスリムが信頼を得るようなおこないをしなければならないと考えています」と語り、この日のインタビューを終えました。

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