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ハラール市場における非常食の可能性

こんにちは、Salam Groovy Japan編集部、マレーシア出身のイマンです。近年、日本製のハラール非常食が多くなりました。今回のブログでは、インドネシアやマレーシアにおける「ハラール非常食」の状況などを見ていきましょう。

インドネシアも、日本と同様に災害の多い国です。環太平洋火山帯とアジアモンスーン地帯に属しているため、台風や豪雪を除く、インドネシアも日本と同じような自然災害に直面しています。

年間平均400回、マグニチュード4以上の地震が起こり、129の活火山のうち17個が現在非常に活発です。また、1600年からの400年間で約100回の津波が発生しています。

提供元:日本の経済協力(ODA)

一方のマレーシアでは、一般的に地震や火山噴火、台風は起こりませんが、洪水、干ばつ、地滑りや深刻な煙霧が発生し、そのうちでも洪水が最多となっています。モンスーン性の洪水は、その規模や発生する場所、時間帯が毎年異なります。

しかし、ここ数年、マレーシアでは異常な雷雨やモンスーン性の洪水、強い地震など、異常な気象や気候現象が発生し、大きな被害をもたらしています。2021年12月から2022年1月にかけて、最悪の洪水がマレーシアに見舞われ、マレーシア政府は公式に「100年に一度の災害」と発表しました。

さらに、インドネシアやフィリピンなどの環太平洋火山帯にある国々と隣接するマレーシア地方だと、それらの国々で発生した地震による災害を経験することもあります。例えば、2022年2月25日には、西スマトラ州で発生したマグニチュード6.2度の地震による突然の揺れも経験。マレーシアの気象庁によると、セランゴール州、ネゲリ・センビラン州、ペラック州、ジョホール州で揺れが感じられました。

環太平洋火山帯には入っていないにもかかわらず、過去に地震や津波が発生したこともあります。例えば、2015年6月5日にサバ州ラナウで発生したマグニチュード6.2の地震、2007年11月~2008年5月にパハン州のベントン、ジャンダバイク、ブキットティンギの地域周辺でもマグニチュード3.5の地震が発生しました。

近年の災害の発生により、前よりもマレーシアの人々の防災意識は高まっており、日本の防災対策を見習うべきだということがメディアでも取り上げられていました。

「非常食」におけるインドネシアの需要

災害時には、食料が手に入らない、あるいは食料を調理するための基本的な必需品がないといった状況に陥る可能性があります。インドネシアでは、災害時に通常提供される食料品は米やインスタントラーメンが主流ですが、これでは日々の栄養をきちんと摂ることができないでしょう。

インドネシアでは長年にわたり、クッキー、缶詰、フードバー、あるいはエネルギーバーなどの「非常食」を開発する研究が行われてきました。Elvira Syamsir博士(IPB大学、2019年)によると、インドネシアの非常食製品は、インドネシア人が依然として米に大きく依存しているため、飢えを解消するには不十分であり、毎日の栄養ニーズを満たしていない・保存期間が限られている・即座に食べることができない、という欠点が明らかになりました。

それでも、ビスケット(2010年登場)、真空パックされたロントン※1(2015年登場)、ゼリー(2021年登場)、おかずが入ったレトルト食品(2021年登場)といった、調理せずに食べられる「非常食」の開発に成功しているものがあります。現在、最も長く保存できる製品は「真空パックされたロントン」であり、パッケージが破損していなければ、5年まで保存可能となっています。

災害用のビスケット「ビスク・ネオ」(Bisku Neo)(提供元:Pusyantek Brin)

インドネシア・メディアOkezoneによると、「災害時、住民は調理をしなければならないのが困るはずです。そこで、調理することなく、そのまま食べられる食品が必要なのです」と、真空パック食品(buras steril)の発明者は、災害時にすぐに食べられる食品の必要性について説明していました。

非常食の他にも、豆や缶詰、ドライミートなど非常食に適した食品をはじめ、災害に備えるための情報を発信しているメディアも手軽に見つけることが出来ます。

これらのことから、インドネシアでは非常食に対する関心や要望が高いことがわかるでしょう。日本の非常食は5年~10年の長期保存が可能で、米からスナックまで多様な商品があるという優位性があります。また、「インドネシア人の米への依存度が高い」点が、インドネシアが過去にうまくいかなかった主な原因となっていることから、日本の様々なお米の非常食が、そのギャップを埋めることができるだと思います。

そして、日本の非常食の中で、レスキューフーズの自立加熱式非常食は、日本在住のインドネシア人ユーチューバーが紹介したこ とから、インドネシアのメディア「Detik Food」にも掲載されました。Detik Foodは、「もしインドネシアにこのような食品があれば、特に2020年初頭の洪水で多くの人が物資や食品を確保する時間がなかったときに役立ったことでしょう」と主張しています。

マレーシアにおける非常食の課題

災害時には、様々な組織やコミュニティが、飲料水、保存可能な食品、生鮮食品からなる食糧支援を行うのが一般的です。その中に日本のような「非常食」が入っているかというと、その可能性は比較的低いと考えられます。

マレーシアのメディアでは、「災害時に必要な食料」、特に「非常食製品」についての情報を探すことすら難しいのです。

「非常食」そのものに関する情報はほとんどありませんが、近年、マレーシアでは予期せぬ自然災害に見舞われ、都市部での洪水リスクが上昇している中、防災対策や防災意識の重要性を訴えるニュースが多くなっています。

2014年度・コタバルの救援センターでの洪水被害者(提供元:News Straits TimesよりBazuki Muhammad

マレーシアのメディア「News Straits Times」によると、国家安全保障会議(NSC)の災害対策長官Mohd Ariff Baharom氏は、「洪水の被災者には、すぐに食べられる食品とペットボトルの水が最優先されるべき」「食事を作る調理器具がないため、ビスケット、パワーバー、セルンディング※2、缶詰などのすぐに食べられる食品の提供が必要」と主張しています。

非常食の開発において、災害用に特化した食品を製造しているマレーシア企業はほとんど見当たりません。調理済みのレトルト食品は少し見かけますが、賞味期限は1年程度のものが多いですね。

マレーシアにおける非常食の取り扱いの課題とは?
日本の非常食をマレーシアに導入する場合、「非常食に対する意識の低さ」が大きな要因となります。先ほど申し上げたように、防災意識は徐々に高まってきていますが、非常食に関してはまだまだです。

また、水を必要とする製品では、「清潔な水」も課題のひとつになります。洪水が多く発生することから、汚れた水をきれいな水に変える製品か、安全な施設に避難できる位置づけでないと、現地人がいつでもきれいな水を手に入れられるとは限りません。

私は、日本のハラール認証の非常食を食べたことがあります。自然災害に直面した経験がほとんどないマレーシア人の私からすると、非常食というよりは、すぐに食べられる食事に近い製品だと思いました。マレーシアではフリーズドライの技術が一般的でないため、水だけで完全調理ができるのは驚きました。自己発熱する食品も現地ではあまり出回っていないので、アウトドア好きな方々の需要を取り込むことができるのではないでしょうか。

マレーシア小学校が行われた「リーダーシップジャンプ 」の一例(提供元: Sekolah Kebangsaan Haji Ismail

マレーシアの学校では、教育やモチベーションの向上、人間関係の構築などを目的に、屋内外のアクティビティを盛り込んだキャンプが盛んに行われています。日本の非常食は、そのようなイベントにおいて、日本の最先端技術の紹介や、森の中で行うアウトドア活動のための食料キットとして、教材に活用できるかもしれません。

今後、世界の気候変動に伴い、両国とも非常食の需要が高まると思います。もちろん、イスラム教徒が多い国ですから、その市場に参入する際にはハラールであることが必須です。日本の非常食は、災害用のほか、日本料理や日本の技術を知ってもらうための媒体としても活用できるのでしょう。

※1 ロントン: バナナの葉の中に円筒形に圧縮した餅を包んだインドネシア料理で、インドネシア、マレーシア、シンガポールでよく食べられている。
※2  Serunding: スパイスで作られ、乾くまで調理され、時には脂っこい(特に肉のフレーク)長持ちする料理の一種。味は甘口と辛口があり、レシピも様々である。

参考記事:
ハラーラン・トッユイバンによる品質確保
シュブハからハラールへ、日本製商品の可能性

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