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ハラール認証を取得して自然放牧の乳製品をつくる なかほら牧場

岩手県岩泉町のなかほら牧場は、日本では数少ない「山地(やまち)酪農」の牧場です。牛乳はもちろん、ヨーグルト、アイスクリーム、プリン、バターといった乳製品のラインナップを展開しています。
2013年11月には、ムスリム(イスラム教徒)でも安心して口にできるハラール認証を取得。以降、毎年の更新をおこなってきました。

今回、同牧場の岡田社長に取材をして、日本では希少な山地酪農の特徴および牧場に関わるようになったきっかけ、そしてコロナ禍におけるハラール製品の現状についてもお話をうかがいました。

日本ではスーパーに行くと、色々な種類の牛乳が並び販売されています。牧場名がそのまま商品名になっているものや、「おいしい」「さわやか」といった表現が躍るもの、「低温殺菌」「成分無調整」のように製法をアピールするものなど実にさまざまです。
これらスーパーに並ぶ一般的な牛乳は、本来なら牛が食べないトウモロコシや配合飼料が与えられています。そして生産効率を重視するため、自由に動きが取れない牛舎の中で、ほとんど運動の機会もないままに飼われています。

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一方、なかほら牧場の場合は、24時間・365日、牛たちは山で過ごし、搾乳の時だけ山から下りてきます。搾乳小屋はありますが、牛舎はありません。牛たちが口にしているのは、山に自生する野シバなどの野草と木の葉です。飲み水は、山清水や地下水なので、塩素の入り込む心配もありません。繁殖も自然交配・自然分娩・母乳哺育。母牛も仔牛も動物本来の姿でたくましく生きているのです。

岡田社長によると、山地酪農のスタイルは、今や欧米でも少なく、流通ベースで運営している国内の山地酪農場は僅か4,5軒ほどとのこと。
「我々人間が口にする食べ物の価値は、それが如何にしてつくられているかではないでしょうか。すべての過程がわかる製品であることは、本来大変重要なことのはずです」と語ったのが実に印象的でした。

そのままでは人間が食べられない草を、おいしい牛乳に変えて分けてくれる。そして良質なタンパク源として肉を提供してくれる。それが牛という生き物です。
1リットルの牛乳を作るために、母牛は400~500リットルの血液を循環させるといわれています。愛しい我が子のために、命を削って乳を出しているのです。
なかほら牧場では、「哺乳期の仔牛が飲む分を奪うのはよくない」との考えから、生後2ヵ月ほどは母乳哺育で育てます。1頭の母牛からは、一般的な牧場の1/4~1/6ほどの量にあたる、1日6~8リットルほどしか搾れません。

なかほら牧場は、1984年に中洞正氏によって開設され、およそ5年の歳月を掛けて「通年昼夜放牧」という、現在のスタイルに繋がる牧場の基礎ができました。
一方の岡田社長は、牧場とはまったく無縁の業種からの参入。1987年に編集と広告制作で株式会社リンクを創業し、バブルパンク後の1996年からはホスティングやインターネット電話サービスなどを提供しています。なかほら牧場との接点は2004年に立ち上げたオンラインモール。

「ちゃんとした食材を提供するという運営方針に沿って、当時の仕入れ担当者が『いい牛乳がある』と、この牧場を見つけてきたんです」「担当者から紹介を受けてすぐにすごい牧場だと思い、こんなにまともな生産者は支えないといけないと感じました」と、岡田社長は牧場との出会いを振り返ります。
その後2009年12月にはリンクとしてなかほら牧場の支援を決意。翌2010年2月に農業生産法人株式会社企業農業研究所を設立し、以来その運営をささえています。
牧場開設から37年の長きに渡り牧場長を務めた中洞氏は昨年、2021年に退任。現在は相談役として関わっています。

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ハラール認証の取得については、「当牧場の製品が、イスラム教徒に適格な食品であると同時に、生産工程が明確になり、ちゃんと作っていることの証明にもなるという認識で取得した」と、岡田社長。現在のところ、なかほら牧場の製品は日本語対応による日本人向けの販売のみ。「ハラール市場に向けては、過去に1度だけ、航空会社からのオーダーでカップアイスを納品したことがある程度」とのこと。

ハラールツーリズムへの期待については、「『時間的に日本で東京から一番遠い場所』とも言われるこの牧場に、ムスリム観光客の訪れる機会はそうそう無いのが現実です」と語りました。
また、COVID-19パンデミックの影響については、「以前は幾つかの百貨店にショップを出していましたが、入店者の減少で閉店がつづき、現在は東京・日本橋の高島屋新館地下1階の店舗だけ」とのこと。パンデミック禍の収束、インバウンドの回復と、ムスリム需要の促進に期待を寄せています。

商品例:通販で人気の詰め合わせセット(冷蔵便 送料無料)税込7,150円

  • ピュアグラスフェッドバター(ノーマル) 1個
  • なかほら牧場 牛乳720ml 1本
  • ノンファットヨーグルト 1本
  • ミルククリーム・キャラメル 1個
  • カスタードぷりん 2個

<企業概要>
会社名:なかほら牧場(農業生産法人 株式会社企業農業研究所)
本社所在地:岩手県下閉伊郡岩泉町上有芸水堀287 〒027-0505
東京事務所:東京都港区北青山2-14-4 アーガイル青山14階 〒107-0061
事業内容:山地酪農乳牛の生産・飼育・販売、牛乳・乳製品・関連製品の製造・販売、山地酪農家育成のための実地指導および研修、肉牛生産や家畜福祉に関する実践的研究への協力、農薬も肥料も一切使用しない自然栽培農法の研究・実践
公式サイト:中洞牧場



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