2030年のグローバルハラール市場【地域・セクター・実現要因】
Salam Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。
前回のコラムで、世界のハラール市場をリードしているマレーシアとインドネシアのハラール産業の方向性の違いを検討しました。
マレーシアは、2008年よりHalal Industry Master Planを実行し、国内ハラール産業の育成を進めてきました。
現在、2030年に向けて新しいプランを開始しています。このプランを読み解くと、ハラール産業先進国であるマレーシアが、ハラール産業の将来をどう捉えているのかを知ることができます。
Halal Industry Master Plan
Halal Industry Master Planは、マレーシア政府による国内ハラール産業振興策です。2008年から2020年には、マレーシアをグローバルハラール産業ハブとして成長させ、マレーシアハラール認証の海外での信頼を高め、国内中小企業の海外市場への進出を後押ししてきました。
2021年からの新プランでは、これらの更なる発展を目指しています。
2030年グローバルハラール市場:約547兆円
Halal Industry Master Plan 2030では、2030年のグローバルハラール産業規模を次のように予測しています。
グローバルハラール市場規模
ハラール産業全体の傾向としては、拡大傾向にあることに変わりはありません。
市場の中心となるのは、東南アジアおよび中東市場です。
2018年 | 2030年 | 拡大率 (%) |
3.1兆米ドル(約339兆円) | 5兆米ドル(約547兆円) | 162.2 |
地域 | 2018年 | 2030年 | 拡大率 (%) | 2030年 地域シェア (%) |
アジア太平洋 | 1.6兆米ドル (約175兆円) | 2.8兆米ドル (約306兆円) | 175.0 | 56.0 |
MENA (中東・北アフリカ) | 0.8兆米ドル (約87.5兆円) | 1.2兆米ドル (約131兆円) | 150.0 | 24.0 |
ヨーロッパ ユーラシア | 0.3兆米ドル (約32.8兆円) | 0.5兆米ドル (約54.7兆円) | 166.7 | 10.0 |
アフリカ (サハラ砂漠以南) | 0.2兆米ドル (約21.9兆円) | 0.4兆米ドル (約43.8兆円) | 200.0 | 8.0 |
北米 | 0.2兆米ドル (約21.9兆円) | 0.3兆米ドル (約32.8兆円) | 150.0 | 6.0 |
3つのコアセクター
マレーシアは、今後の国内ハラール市場のコアセクターを、次の3つと想定しています。
現在と変わらず、飲食料品が、最大の産業セクターと予測されています。
セクター | 2018年 | 2030年 | 拡大率(%) |
飲食料品 | 519億米ドル (約5.7兆円) | 852億米ドル (約9.3兆円) | 164.2 |
化粧品 パーソナルケア | 70億米ドル (約0.77兆円) | 105億米ドル (約1.15兆円) | 150.0 |
医薬品 | 34億米ドル (約0.37兆円) | 59億米ドル (約0.65兆円) | 173.5 |
その他 | 62億米ドル (約0.68兆円) | 117億米ドル (約12.8兆円) | 188.7 |
3つの発展セクター
今後の成長が期待されるセクターとして、次の3つを挙げています。
- モデストファッション
- メディカルツーリズム
- 医療機器
モデストファッションは、日本のメディアで取り上げられたムスリムロリータや、ユニクロで販売されている様な西欧的デザインのファッションではありません。
宗教的観点からみてもムスリムにとってより良いと考えられるファッションへの需要が、高まると考えられています。
5つの実現要因
- トレーサビリティシステム(IR4.0、IOT、Blockchain、Fintech、Bigdata等の活用)
- ハラール産業専門家の人材育成
- 規格、認定及び認証サービス
- イスラム金融
- ロジスティクス
今までのハラール産業は、製品やサービス自体のハラール性の向上に注力してきたように思います。今後は、産業全体のエコシステム(ファームから食卓まで)のハラール性担保の為のシステム開発、実装及びその運用が、注目されると考えられます。
ハラール商品需給ギャップ:80%
今回のプランで私が最も注目している点は、マレーシアが、ハラール製品の需給ギャップを80%と推定していることです。
これは、ハラール市場での商品供給が不足しているという意味ではなく、ハラールであると確信できる商品が、十分に供給されていないという意味です。
2008年に開始されたHalal Industry Master Plan 2020の実施中から、この需給ギャップが注目されてきました。
そして現在でも、この状況が大きくは改善されていないのです。
この需給ギャップの解消が、イスラム諸国の経済発展に伴い、ムスリム消費者からさらに求められると考えられます。
これを実現ための5つの分野に、ハラール産業での新しいビジネスチャンスが提示されています。
参考
Malaysia: MNCs, big firms should help SMEs involved in Halal products
Halal to the world:Malaysia’s HDC gearing up to provide consultancy to foreign governments
Azmin: Halal standards should be of value proposition, not barriers
Salam Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。
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