COVID-19ワクチンはハラールか? 公益性と宗教性の狭間
Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。
インドネシアでハラール認証を受けていないCOVID-19ワクチンの接種忌避が起こっている、とのTwitter投稿を読みました。実際にハラール市場では、インフルエンザワクチン等を含めたハラール認証を取得していない医薬品が、使われています。
公益性と宗教性の狭間にあるワクチン
2021年1月31日にインドネシアの国家機関BPJPHは、中国シノバック製COVID-19ワクチンにハラール認証を付与すると発表しました。あるTwitter投稿は、このシノバック製以外のワクチンの接種忌避が起こっている、と呟いています。
ワクチンの公益性からみたハラール
ハラール市場で現在使用されている多くのワクチンや医薬品には、豚由来やアルコール由来の成分が含まれていたり、製造過程でそれらが利用されていたりします。その一番の理由は、利用しない場合の社会的損失と利用した場合の公益性を比較した結果です。
シンガポール・イスラム宗教評議会(MUIS)は、COVID-19ワクチンは救命接種であるとして、社会全体の公益性を取らなければならないと述べています。今回ハラール認証を出したBPJPH、UAEのファトワ評議会、英国イスラム医師会等も、同様の見解を述べています。
宗教性からみたワクチンの課題
タイのハラール産業カンファレンスに参加した際に、マレーシアの大学教授と中東の宗教学学者の間で、食品生産におけるアルコール使用に関する激しい議論が展開されました。
加工食品を製造し世界に輸出している東南アジアでは、食品製造への工業用アルコール使用を、生産現場や食品の清浄を保つために容認しています。中東の宗教学学者は、飲料アルコールも工業用アルコールも化学式は同じなのでハラームであるとして、一歩も譲りませんでした。
ワクチンに対しても、同様の論争が存在しています。豚やアルコール由来原料を含有あるいは利用した製法のワクチンは、たとえそれらの成分が残留していなくても使用すべきでない、とする立場があります。マレーシアのJAKIMは、COVID-19ワクチンのハラール認証取得を求めています。
インドネシア人の実際の反応は?
生存に関わる緊急時のハラールについて、数ヵ国のムスリムに聞いた事があります。全員から、生存を優先して問題ないとの答えが返ってきました。そこでCOVID-19ワクチン接種についてどう思っているのか、インドネシアの友人達に聞いてみました。
その結果、どのワクチンでも早く打ちたいと言う人もいれば、欧米製のワクチンが良いという人もいました。市井の人々の視点から考えても、ワクチンのハラール性論争は、簡単には決着できるものではないようです。
参考
Indonesia to approve world’s first halal-certified COVID-19 vaccine
Indonesia to get more COVID-19 vaccine doses from China
AstraZeneca says no pork in vaccine after Indonesian council claims dose is‘haram’
https://twitter.com/keikuma/status/1395216958207848451
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。
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