ハラールフードデリバリーは成功できるか?進化するマレーシアフードデリバリー

Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。

COVID-19の流行で、フードデリバリーが急伸長したのは日本だけではありません。コロナの流行前から、マレーシアではGrab Foodの登場によりフードデリバリー産業が拡大してきました。そして今回のパンデミックによる行動制限は、その発展を急速に後押ししています。今回のコラムでは、マレーシアのフードデリバリー産業とハラールフードデリバリーについて、検討したいと思います。

パンデミックの日常生活への影響

マレーシアではパンデミックを抑え込むために、2020年3月18日から行動制限:Movement Control Order(MOC)が行われてきました。

日常生活への影響

私の友人(マレー系ムスリム)が住むクアラルンプール郊外の中間層上位向けの住宅街では、幹線道路に繋がる道がブロックされ、警察官によって付近一帯への出入りが制限されたそうです。最も厳しい時には、外出は週2回の食品の買出しのみに制限され、一度に一家族2名までしか許されなかったそうです。

ビジネスへの影響

友人が経営する会社の事務所も同様にブロックされ、許可書を持った社員が一日1名しか出入りできない状況が続きました。その地域は感染が深刻であったこともあり、社員の一部が退職してしまい、ビジネス自体の再構築を迫られていました。

急伸するオンラインビジネス

新聞記事によれば、シンガポールに近いジョホールバールでは、ダウンタウンにある小規模食品販売会社全体の事業規模が50-70%縮小し、自宅営業か廃業を余儀なくされたとのことです。2021年5月のマレーシアの民間企業調査によれば、回答者の57%が「オンラインでより多く買うようになった」と回答しており、LAZADA Malaysiaへの出店企業数は、300%増加しました。マレーシア国立銀行によれば、オンラインの小売売上はほぼ倍増し、キャッシュレス決済やオーダーから決済まで完結するスーパーアプリが、急速に普及したとのことです。

お持ち帰りは当たり前のマレーシア

マレーシアのお昼時や夕刻には、テイクアウトの食事やビニール袋に入った飲料を提げている人を良く見かけます。どの飲食店でも持ち帰りができますし、食べ残しを自宅に持って帰ることも当たり前です。企業によるフードデリバリーサービス開始以前から、バイクを使った買い物代行をする個人事業主もいました。このようにマレーシア消費者は、パンデミック以前から、料理を自宅に持ち帰る事に慣れていたのです。

多種多様なデリバリーサービスの誕生

料理を家に持ち帰る習慣があったマレーシアですが、Grab FoodやFood Pandaの登場により、フードデリバリー産業が大きく成長します。そのサービスは、スマートフォン一つで数多くのお店の多彩なメニューの中からオーダーしオンライン決済までできるスーパーアプリの登場によって、利便性が大きく向上しました。現在では、食の種類、ユーザー、状況等、ユーザーの細かいニーズに特化した様々なデリバリーサービスが登場しています。

サービス名特徴
GrabFoodユーザー評価が高い
Lalamove食事の質
SmartBiteレストランからのデリバリー
AirAsia Fresh生鮮食料品
Eat Cake Today誕生日向けの食事
FoodPandaホーカー(フードコート)
Hometaste家庭料理
The Naked Lunchboxヘルシーフード
Salaビーガン向け
PledgeCareペットフード
Dietmonstaダイエットフード
ChunkyMonkysケント食
Ode Jeeハラールフード

ハラールフードデリバリーは成功できるのか?

敬虔なムスリムが多いケランタン州で誕生したマレーシア初のハラールフード専門デリバリーのOde Jeeは、登録している食品・飲料ベンダーは全て適切なハラール認証を受けイスラム教徒によって100%所有および運営され、高いハラール性が担保されている事が特徴です。ムスリム消費者が6割を占めるマレーシア市場においては、市場にマッチしたサービスといえるでしょう。しかしながら、かれらが大きく成長するためには、二つの課題があると思います。

割高な価格

フードデリバリーサービスの課題として、購入価格にデリバリー費用が加算されるため、価格がレストランで食べたり持ち帰るより割高となってしまいます。

私がマレーシアの拠点としているクアラルンプール郊外での庶民の食事の価格は、庶民的なレストランで一人あたりRM5-20(130-530円)程度です。KFCやマクドナルドも、同じような価格帯です。私の拠点までの最低デリバリー料金を調べてみると、Food Pandaで大体RM4(約106円)です。距離にすると、バイクで10分程度以内の距離です。更に遠くのレストランからオーダーすれば、距離によって料金に加算されます。また、ミニマムオーダーを設定している店舗も少なくありません。

そのため、近所のレストランに出向いたほうが良いと考えるマレーシア人も、少なくないのではと思います。WIFIが使い放題で、クーラーが効いていて、ケーブルテレビがあって、何時間いても文句は言われない。後片づけの手間もいりません。行動制限がなければ、レストランに友人達や家族と集まり食事を楽しみたいというのが、マレーシア人の本音のように思います。

サービスのハラール性への要求水準

クアラルンプールの私の部屋までデリバリーしてくれるハラールレストランをFood Pandaで検索すると、700軒以上見つかります。これらのレストランで提供されている食材や飲料は、その多くがハラール認証を取得しており、長年市場で受け入れられてきたものです。マレーシアでハラールフードを宅配してもらう事は、ハラールフード専門デリバリーでなくとも簡単なのです。

Ode Jeeの重要な成功要素の一つは、ムスリム消費者がサービスに求めるハラール性の水準に依るところも大きいと思います。近年では、マレーシアやインドネシアの若者に、保守的な宗教観を持つ人が増えていると言われています。もしフードデリバリーにさらに高いハラール性を求める消費者が今後増えれば、より多くのユーザーを獲得できるでしょう。

コロナ後のマレーシア人の新しい消費行動

約1年間の行動制限の中で、多くのマレーシア人が、フードデリバリーやスーパーアプリの利便性を体験し、積極的に利用してきました。この状況は、少なくともあと1年程度は続きそうです。そのため、この新しい消費行動は、今後のマレーシア人の食文化に大きな影響を与えるでしょう。

一方で、伝統的な食習慣を変えることは、容易ではありません。先ほど言及した民間企業調査によれば、国民の71%が、2022年末までに以前と同じ状況に戻ると信じています。つまり、多くの人々が、以前の生活スタイル戻ることを希望しています。

1-2年でコロナ禍が収まり以前の生活スタイルに戻った時、今回検討した新しい消費行動のどの部分がマレーシア人に定着し、従来の食文化にどんな影響を与えるのでしょうか。これからも注目していきたいと思います。

参考

Survey reveals Malayisan are shopping online more than before COVID-19
Top 12 Food Delivery Services You Can Order Online in Malaysia productnation
Malaysia’s first halal food delivery app ‘Ode Jee’ eyeing nationwide expansion
Food traders now work from home
Food Panda
Ode Jee

JL Connect Malaysia SDN BHD / ディレクター 橋本 哲史
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。

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