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【緊急レポート】インドネシア・マレーシア事業家心理はサバイバルモード

Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。

COVID-19の感染拡大による行動制限等が始まってほぼ1年半。マレーシアやインドネシアでもテレワークや外出制限が実施される一方で、悲劇的な感染爆発が起こることもなく、全体的には楽観的雰囲気も漂っていました。しかし、今年の6月頃からの変異株による感染急拡大を境目に、事業家心理が大きく変化していることを日々実感しています。

パンデミック前のKLIA2

COVID-19感染状況

公開データによれば、2021年7月16日の一日あたり新規感染者数は、インドネシア:56,000人、マレーシア:12,541人、日本:3,408人となっています。感染者数でみればインドネシアの状況が厳しいですが、人口100万人あたりでみると、マレーシア:333人、インドネシア:169人、日本:20人と、マレーシアの状況も芳しくありません。

インドネシアは、一日あたり14,000人程の新規感染者数をピークに、6月9日頃までは6,000人程度の小康状態のように見えました。その後感染拡大が始まり、約1ヶ月で7倍以上に感染者数が急増しました。マレーシアは、6,000人程度をピークにその後小康状態に見えましたが、5月頃から感染者数が増加傾向にとなりました。6月後半からは急拡大し、13,000人にまで拡大しています。

6月からの感染拡大前までの1年間の傾向をみると、2020年度末から今年の2月頃の感染ピークを除けば、ある程度安定した状況に見えました。ワクチンの有効性の確認と接種の開始によって、だいぶ楽観的な雰囲気が出てきたと感じていました。

インドネシア・マレーシアのパンデミック対策

パンデミック対策としてマレーシア政府は、2020年3月18日から14日間の行動制限(MOC:Movement control order)を発令しました。この行動制限は、いくつかの段階を経て継続しています。現在はNational Recovery Planが実施され、パンデミック後の経済回復を視野に入れた取り組みが行われています。

インドネシアでは、3月上旬頃から州レベルでのArea of emergencyが発令され始めました。その後、政府による国レベルの行動制限や様々な経済支援策等のパンデミック対策が実施されてきました。

両国とも初めての事態ということもあり、それらの対策がうまく機能しているとはいいがたい状況です。そのため、対策に対する国民の不満や不安が高まっていると感じます。

パンデミックによる事業家心理

マレーシアでMCOが始まった当初、友人のマレーシア人事業家は、自ら経営する会社事務所への出社が一日一名に制限されたり、自宅からの外出が週2回に制限されたりする等、厳しい影響を受けました。そして、事業の生き残りや再編にも奔走していました。

インドネシアでは、自宅勤務の要請やモールやレストラン等の閉店が実施され、多くの失業者が発生しました。しかしながら、総人口と比較した罹患者数が多くなかったからなのか元来の国民性からなのか、私の友人達にあまり悲観的ムードではありませんでした。

2020年の秋頃までの友人達の心理状況は、先が予測できないための不安と現実の売上減少から、いったん様子を見るという感じでした。それ以降は、回復後を見据えた事業再編や再始動に、前向きだったと感じていました。特にワクチン開発の実効性が報道されたころから、楽観的雰囲気も漂っていたと思います。

事業家心理はサバイバルモードへ

その楽観的な雰囲気は、6月前半からの新規感染者数の急拡大を受けて急速に変化したと感じています。マレーシアの友人の言葉を借りれば、現在の事業家心理は「サバイバルモード」に変わりました。特に中小企業経営者のそれは、完全に切り替わったと明言しています。

インドネシアの友人達からは、感染拡大に伴う自宅検疫等による工場や事務所の一時閉鎖、担当者の罹患による決裁やプロジェクト進行の遅延等が日に日に増えていると言われます。日本の化粧品の売り込み先を探している私のパートナーは、「日本製品の魅力は変わらないが、市場のニーズが明らかに切り替わった。高級品の販売は当面厳しいと思う。手ごろな価格の衛生商品やサプリメント等への需要が高まっている。」と言っています。

サバイバルモードからの回復

私自身は、1ヶ月で事業家の心理が一変した事を肌で感じています。この心理の変化が統計数値や報告書等に反映されるまでには、少し時間がかかります。現在インドネシアやマレーシアでの事業を計画されている方は、市場心理の変化とそれに伴う需要の変化を、考慮されたほうが良いと思います。

パンデミックからの経済回復時期について、多くの産業では今年の後半から来年の早い時期、ダメージの大きかった旅行産業は2023年頃とする報告が、今年の前半にはありました。今回の感染急拡大は、それに負の影響を与えそうです。また、政府の感染対策への失望感が拡大していることも、少し気がかりです。

参考

Our World in Data
14-day Movement Control Order begins nationwide on Wednesday
Muhyiddin outlines 4 phases of National Recovery Plan
Ini Daftar Pemda yang Sudah Tetapkan Darurat Corona

JL Connect Malaysia SDN BHD / ディレクター 橋本 哲史
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。

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