ハラール市場は本当に親日なのか?
Salam Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。
あるテレビ番組が、アフガニスタンを親日国として取り上げていました。マレーシア、インドネシア、トルコ、アラブ首長国連邦、イラン等、ハラール市場には親日国が多いと言われています。それが真実であれば、日本企業にとって非常に有利な市場と言えるでしょう。マレーシア、インドネシア、ドバイでの経験から、ハラール市場の「親日」について考察します。
マレーシアの東方政策
マレーシアでは、前マハティール首相の提唱による東方政策(ルックイーストポリシー)が、1981年から行われてきました。日本や韓国の経済成長を研究し、工業化を推進しようとする政策です。この政策のもと多くのマレーシア人が日本に派遣され、日本文化や日本企業のビジネスを学びました。このような両国の関係が、マレーシア人の日本に対する好意的評価の一因であることは、間違いありません。
伝承される被支配者の記憶
一方で、正反対の評価を持っているマレーシア人も少なくありません。先の大戦で日本は、英国に替わりマレーシアを占領しました。その結果、戦闘や占領地管理の為に、多くの人々が犠牲となりました。中華系の友人は、「親類に戦死者が多くいるから、日本に対しては良い印象はない」と言っています。
「心の友」が国民的流行歌のインドネシア
インドネシアを訪れて驚いたことは、国民的流行歌の1つが五輪真弓の「心の友」であったことです。日本車があふれ日本の飲食店がショッピングモールに出店しているジャカルタを旅すると、日本文化が受け入れられているとの印象を持ちます。
日本人とは付き合うな
以前にインドネシア人パートナーから、「私と付き合わないように忠告されている」と告白されたことがあります。私とも笑顔で挨拶する人から、「日本人は悪いから付き合わないほうが良い」と言われたそうです。それが1人や2人なら良いのですが、どうもそうではないようです。同様の話は、マレーシア人パートナーからも聞いたことがあります。
単純ではない「親日」という感情
マレーシアやインドネシア市場進出の理由として、「親日国なので日本商品を好意的に見てくれる」とおっしゃる方も少なくありません。私自身、マレーシアやインドネシアに通い始めた頃には、両国とも親日なんだなとの印象を持ちました。しかし、両国での経験が増すほどに、マレーシアやインドネシアの「親日」感情は一枚岩ではない、と実感しています。
マレーシアやインドネシア進出支援に際してお会いする日本人は、「親日」感情を好意的に捉えがちであるように見受けられます。しかしながら、ハラール市場進出マーケティングの視点からは、十分に慎重になるべきと考えています。
今から10年以上前、ドバイの知り合いに「アラブは本当に親日なの?」と問いかけたことがあります。「遠方から来た旅人に好意的に接するのは、日本でも同じでしょう。」と返ってきたことを、今でも鮮明に覚えています。
参考
「心の友」の背景探る ドキュメンタリーを製作 「愛してる」のDNA
東方政策の概要
Salam Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。
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