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徹底したハラール認証取得でムスリムに和食届けたい 日乃本食産

国際基準の厳格なハラール認証に対応した和惣菜を提供する日乃本食産株式会社は、「和食のバリアフリー」を掲げ、食事に規律を持つイスラム教徒(ムスリム)にも安心と美味しさを届けてきました。

同社代表の見野氏は取材の冒頭で、「日本で開催される国際的な会議の場面や、歓迎行事の席でもムスリム向けの食事だけ分けて提供されている実態があります。これは国際基準で求められている多様性の観点からも問題であり、食事を共にすることで親睦を図るという視点でも重要な課題だと考えてきました」と述べ、同社によるハラール対応の取り組みについて語ってくれました。

日乃本食産は2017年1月、神戸市北区にある「神戸フルーツフラワーパーク」の敷地内に、ハラール対応のセントラルキッチンを構えました。その入口には「ハラールポリシー」が掲げられ、500~600種類ある原材料の全てにおいてハラール性を担保していることが示されています。そして新たなスキームとして設定された「ハラールセントラルキッチン認証」を取得済です。認証商品数は150品を超えます。

見野社長によると、「世界人口の1/4はムスリムだが、日本ではほとんどその対応ができていません。当社がやるからには日本人の味覚においても美味しく、尚且つESMA(※1)やGAC(※2)の認証など、厳格で有名な中東のイスラム諸国でもしっかりと通用する国際基準のハラール認証を満たしたもので提供したいと考えるようになりました」とのとこと。
※1. アラブ首長国連邦政府基準化計測庁(ESMA: Emirates Authority for standardization & Metrology)
※2. 湾岸認可センター(GAC: Gulf Accreditation Center)

■原料からも徹底してハラール対応にこだわる

そのため日乃本食産は、原料からも徹底してハラール対応にこだわっています。
例えばパン粉の場合、ハラール認証において真っ先に問題となるブタやアルコールとの関りが一見すると無いようなものに見えます。しかし一般的にパン粉にはまろやかさを出すために油脂分のショートニングが使用されており、そのショートニングにはブタ由来の成分が含まれていることが多いので、製品規格書と製造工程表がすべて揃わない場合はハラール認証品として販売するにはグレー領域が残ってしまうという課題がありました。
そこで日乃本食産では、ショートニングに植物性由来の油脂しか使用していないという証明書が添付されているインドネシア製のハラール認証製品を採用することで、ハラール性の担保を確実なものにしています。

またこの他にも、各種の調味料で含まれるアミノ酸が問題となるケースもあります。アミノ酸は、微生物分解によって得られますが、その微生物が何を使って培養されたのか?まで遡る必要があるとのこと。寒天で培養している場合であれば問題ありません。しかしゼラチンで培養している場合だとブタ由来が懸念されます。
日乃本食産では、このように2次、3次原料まで厳しくチェックすることで、ムスリムに安心して食べてもらえるよう、「食のおもてなし」を徹底し、その提供に努めています。

■徹底したハラール対応にこだわる理由

日乃本食産は元々食材関係をホテルに卸していました。しかしホテル業界において目下の課題はアレルギーへの対応であり、それに手いっぱいの状態。そこに東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博といった国際的なビッグイベントの開催となると、更に追加で宗教食の対応が求められることになります。しかし現実的にはそこまで手が回りません。
そこで見野社長は、「当社のハラール商品を使ってもらえれば宗教食の対応もおこなえ、ホテル運営の効率化、オペレーションの簡素化に貢献できる」という考えから取り組みを始めました。それにはマレーシアJAKIMだけでなく、中東のGACやESMA認証への対応も必要です。

それでは調理施設の中を見ていきましょう。文字数の関係もあり、全ての設備・機材を紹介することができないので、ここでは特にこだわり要素の強いものだけを取り上げて紹介したいと思います。

■調理室

加熱水蒸気オーブン

「ハラール対応の料理であっても美味しいものを提供したい」
その理想に近づけるため、例えば料理の主役になることが多い肉料理においては、加熱・冷凍の両面にこだわりを持っています。
この加熱水蒸気オーブンは、400度に加熱した水蒸気で一気に焼き上げることができます。焦げ目が綺麗につき、焼き上がりが均一となるのです。
水蒸気は通常100~150度ほどですが、このオーブンを使うことで例えば輸入品の廉価な鶏肉であっても国産のブランド鶏肉のようにジューシーな焼き上がりが実現できるとのこと。

連動真空包装機(横型)

連動真空包装機は、料理を真空包装で袋詰めする機械です。
真空(減圧)した際、袋内部の圧力が下がったことで沸点が引き下がります。この際に生じる噴きこぼれを防止する二重ノズル構造とトロ火機能が備わっていることによって、液体物の多い真空包装も可能としているのです。
また一般的にこの種の装置の場合、縦型で袋詰めするものが多くなります。その場合は1回当たりの作業効率が落ちるためにOEM生産を受ける場合はロットが大きくなる傾向にあります。
一方の日乃本食産では1回当たりの作業効率が良い横型モデルを採用しているため、100Kg、200Kgといった少量生産の需要に応えることが可能です。これは日本国内のムスリム対応需要を踏まえると、ホテルや旅館の特徴を出す際にも小回りの利いた対応であると言えます。

プロトン凍結機

プロトン凍結機は美味しい肉料理を提供する際に欠かせない機械となっています。
電子レンジと冷凍庫がセットになったようなイメージで、電磁波によって食品の分子を振動させながら冷凍させます。この日は摂氏-34度が設定されていましたが、電磁波によって食材の分子が振動しているために凍結には至っていません。そして-40度に達すると電磁波が停止する設定となっており、この時に食材が一瞬で凍結します。
これにより水の結晶ができにくく、解凍時にドリップが出ないのが特徴です。そのため唐揚げやチキンステーキを解凍した際のジューシーさが違ってくるとのことです。

■長期保存可能な災害食

日乃本食産の災害用備蓄食(ハラール対応食セット)は、一般社団法人 防災安全協会が主催する災害食大賞2019のインバウンド対応部門において見事「金賞」を獲得しています。

災害食の保存状態を実証する機械

長期保存可能な災害食でよく目にするのが「賞味期限5年」という表記。
日乃本食産では賞味期限5年の設定根拠を科学的な視点で取り組んでいます。
一般的に食品は、摂氏20度を基準として10度上がる毎に2倍の速さで劣化すると言われています。この仕組みを利用すれば短期間で劣化の状況を実証試験できます。
つまり、30度で2倍、40度で4倍、50度で8倍という計算になります。日乃本食産では摂氏50度で1年間保存させるという試験がおこなわれています。これは8年間保存したのと同じ試験データを得ていることを意味しています。そしてそれに安全係数0.7を掛けて「賞味期限5年がクリアできた」という根拠にしています。

長期保存可能なのにいつでも美味しい秘密は独自開発・特許取得済の「非発酵調味料」

同社製品の長期保存の秘密は、「ハラール対応の取り組みの中で得た独自開発の調味料にある」とのこと。
見野社長によると、「災害食などのレトルト食品で醤油やみりんなどの発酵調味料を使用している場合、一般的には保存期間3年が限度と考えられている」とのこと。そのため3年以上の保存期間を謳う場合は、理論上発酵させた調味料が使えないということが前提となります。

そこで日乃本食産では、ハラールに対応した「非発酵性調味料」の醤油・みりんを独自に開発しその特許を取得。これらを災害食用の製品に使用することで、理論上でも根拠をもった賞味期限5年の商品として売り出すことを可能にしています。

例えばハラールみりんの場合、水飴に酵母エキス、グルニア酸、コハク酸などみりんのうまみ成分を化学的に足して、「みりん風調味料」を独自に製造するという徹底ぶり。
また同様に醤油についても、醤油を構成するうま味成分を化学的にブレンドすることで「醤油風調味料」を製造しています。
これら非発酵性調味料は、例えるならば塩や砂糖が5年経っても変わらず塩と砂糖のままであるのと同じと言えます。

一般的な災害食だと5年に近付くにつれて味落ちすることが多く、衛生的に問題なかったとしても商品価値が落ちたとみなされて廃棄処分に回されることがありますが、日乃本食産の災害食は、「今日出来上がった商品と5年経った商品とを食べ比べても全く味の違いが分からない製品になっている」ということが特徴にもなっています。

以上が調理の工程と特徴、設備など同社独自でこだわりのある部分での紹介となります。

新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により飛行機が飛ばず、ホテルや旅館で閑古鳥が鳴く状態が続く中、日乃本食産の業績も大打撃を受けています。

しかし見野社長は、
「和食が世界無形遺産として登録され、国際的に広く知られるようになりました。イスラム教徒であっても、安全で美味しい和食を味わってもらえるようにしたい」とし、和食のバリアフリーに引き続き貢献したい語っていたのが印象的でした。

本稿でご紹介しきれなかったシーンを収録した映像をYouTubeにアップしているので、是非こちらもご覧ください。

モーリアンヒートパックに発熱剤と日乃本食産の非常食を入れ、水を注げば15~20分で温かい料理を食べることができる。

■ムスリム市場進出に関心をお持ちの日本企業様へ

Salam Groovy Japanは、「日本企業とムスリム市場をビジネス視点で橋渡しする」をコンセプトに掲げたWEB専門メディアです。
日本の食品産業界がハラール対応に取り組む姿を紹介することで、世界のムスリムの関心を引き寄せ、その市場へ売り込む1つの切っ掛け作りに繋げたいと考えております。
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