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ムスリムインバウンドに特化した観光地誘客の促進/市原DMO

千葉県市原市では、市原DMO(観光地域づくり法人:市原市観光協会)が主体となり、ムスリムに特化した観光地誘客と受入環境整備を行なっています。ムスリム対応にマーケットを絞ったきっかけや今後の展望などについて、執行責任者の池田正臣氏にうかがいました。

市原DMOは、2020年3月に地域DMOに登録されました。「観光地域づくり」を進める12事業に取り組んでおり、その中の大きな柱が、ムスリムインバウンド需要の取り込みです。DMOとは、観光庁が創設した地方公共団体と連携して観光地域づくりを担う法人です。

市原市は羽田空港や成田空港からもアクセスが良く、ゴルフやチバニアン、高滝湖のバス釣りなどの豊富な観光コンテンツに恵まれています。田園を走る小湊鉄道などフォトスポットもありますし、座禅や茶道による日本文化体験もできます。
しかしながら、市原市は従来から観光地誘客の取り組みがあまり積極的ではなかったこともあり、観光地化が遅れていました。

私の前職は旅行会社の法人営業で、千葉県全域を27年間担当していました。その中でも、市原市は特に馴染みのある地域で、多くの事業者と親交し今現在も継続しています。
そんなご縁もあって、市原DMO設立に向けた外部専門人材としてお声がけいただき、2017年に市原市観光協会専務理事に着任したのです。そして、現在は市原DMO執行責任者と観光協会専務理事を兼任しています。

市原市の観光地化を促進する中で、ムスリムに特化することになったきっかけは、2017年千葉市・四街道市・市原市の3市連携による「ムスリムおもてなしマップ」の共同製作へのお誘いでした。

前職では、ムスリムの旅行取扱経験がなく、ムスリム対応の知識は殆どありませんでした。しかし、すでに取り組みを始めている自治体との協業は、ノウハウを習得することができる絶好の機会。これも何かのご縁だと考え、ムスリム対応に本気で取り組もうと考えました。

お声がけいただいた時点で、市内にはムスリムフレンドリーな店舗、宿泊施設は皆無。しかし、3か月間という短い期間で1ホテルと3飲食店のご協力を得て、掲載にこぎつけることができました。今思い返しても、あの短期間で成しとげられたことは奇跡的だと思います。

着装体験

奇跡を起こせた大きな要因は、株式会社G-BIZ EASTの松本代表との出会いでした。同社は、飲食店向けにハラールコンサルティングとハラールフードの提供を行なっており、食材の仕入れや、ムスリム向けメニューの試食、調理場の導線や器具の使い方など全てレクチャーいただくことができたのです。
「ムスリム対応を始めたい」と考えている施設を見つけさえすれば、実際の対処は安心してお任せできる流れを作ることが出来ました。

日本旅館での夕食

2020年1月、市内の日本旅館で初のムスリム対応を開始しました。既に宿泊実績もあります。
旅館にムスリムを迎えるためには、食器やカトラリーを非ムスリム用のものと分ける必要があります。日本旅館で使われる器の種類は非常に多いため、大人数分のムスリム専用食器を個別に用意することは、金銭的にもスペース確保の上でも難しいでしょう。
そこで、市原DMOは日本旅館へのムスリム受入れを可能にするため、宴会食器40セットを購入し譲渡しました。また、各部屋にお祈り用のキブラやマットも準備しました。
恐らく、日本国内でもムスリム対応している日本旅館は数少ないと思います。

また、デイキャンプが楽しめる「いちはらクオードの森」で、2020年11月にハラールBBQ大会を開催。そして、2022年10月には「星野農園(高滝湖)」でもハラールBBQ対応が可能になりました。ここでも、一部機材は市原DMOから提供しています。
施設の負担をなるべく減らすことで、新規参入のハードルを下げるよう努めています。

こうして、ミニマムではありますが、食事や宿泊、お祈りの場所が整備でき、周辺自治体からも視察に来ていただくまでになりました。

ムスリム観光客により楽しんでいただけるよう、礼拝のできる場所をもっと増やし、飲食店の選択肢もエリアも広げていきたいですね。また、周辺自治体とも協力し、広域でのムスリム特化型観光地化も進めていきたいと考えています。

現在、市内でハラール対応している飲食店は9店舗まで増えましたので、独自のムスリムマップを2022年度内に製作予定で、このマップをもとにムスリムに向けたPRをしていきたいと考えています。

留学生ツアー

インバウンド事業としては、千葉大学の短期留学生に向けたPRも行なっています。日本滞在中に市原市内の観光を楽しんでいただき、母国へ情報発信していただく狙いがあります。
他の自治体に先んじた対策を講じ、訪日ムスリム観光客を率先して誘致していきたいと考えています。

ムスリム対応は初期整備が大変ですが、一度環境が整えば、ムスリムのお客様が来てくれるようになります。世界人口に占める割合が非常に大きいムスリムに特化した観光地化は、将来的にも市原市にとって大きな財産になるでしょう。

グランピングリゾート

市原市において、ムスリム対応をスピーディーに進められた大きな要因は、DMOの身軽さにあります。
行政機関の予算は年度単位。新しい取組の始動は翌年度まで着手できません。その点DMOは民間組織ですので、行政スタンスの取り組みを民間のスピードで進めることが出来ます。

また、市原市では市原DMOの事業活動費は国や市からの補助金を活用しており、市原DMO内での予算の使途や配分についての判断は全て委ねられています。例えば、インバウンド対策事業費としての予算を受入環境整備に使うのか、または観光誘致に使うのかは、独自に決定することができます。
これだけ権限を委ねられ、自由度の高い予算組みができるDMOは、他にはあまり例がないと思います。

座禅体験

現在、市内の人気グランピングリゾートも、ハラールBBQができるムスリム向け宿泊施設に対応すべく、準備を進めています。
新たにオープンする別のグランピング施設でもハラール対応の準備をしており、千葉県内で「グランピングのハシゴ」をしていただくのも楽しいかもしれませんね。

喫緊の課題は、問合せ窓口の準備。現在は、市原市観光協会経由で「DMO」宛にご連絡いただくしか方法がないため、2023年4月頃には市内(外部)にハラール専用窓口を開設する予定です。

<事業者概要>
事業者名:市原DMO(市原市観光協会)
本社所在地:千葉県市原市国分寺台中央1-1-1 市原市役所内
事業内容:市原市の地方創生、インバウンド誘致ほか
公式サイト:市原市観光協会

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