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管理栄養士としてハラールを研究/カンリエ 笠岡 誠一氏

NHKのニュース番組を始め、「林修の今でしょ!講座」といった情報番組にも出演する、株式会社カンリエの笠岡取締役。会社設立の経緯や、ご自身が管理栄養士として行なっているハラールの研究についてお話をうかがいました。

管理栄養士の地位向上を目指す「カンリエ」

「管理栄養士」は高度な専門知識が必要とされる国家資格ですが、専門家としての評価がまだまだ低いと感じています。そこで、管理栄養士が活躍する場を広げるため、2021年4月にカンリエを設立しました。私の教え子である櫛田が代表取締役を務めています。

カンリエの主な事業は、メディアの出演・監修といった管理栄養士のキャスティング、食品メーカーの商品監修、飲食店のメニュー開発、イベント・講演の企画運営など。管理栄養士の認知度を上げる上でメディアへの露出は重要と考えており、私自身も情報番組などへ積極的に出演しています。

管理栄養士としてのハラール研究

ハラールに関しては、研究者としても非常に関心を寄せているテーマです。
日本では、ハラール食品・メニューの開発に本腰を入れている企業が多くありません。しかし、少子化に伴い、イスラム教徒も含めた多様な人々を受け入れることが当たり前になる時代が、間近に迫っています。今後、ハラール対応への需要は増していくでしょう。

2007年にアメリカ国立衛生研究所へ留学した際、現地で親しくなった友人がいます。彼は日本企業で働くことを希望していました。そこで留学を終え日本に帰国後、私の自宅に彼がホームステイしたことで、ハラールに興味を持つようになりました。当時私はハラールの知識をあまり持っていなかったため、彼への食事提供には非常に苦労しました。
この時、食の専門家としては宗教食の知識も必要であると考え、ハラールについての研究を始めたのです。

研究を進める中で、在日ムスリムの方たちに向けた「HALAL RECIPES JAPAN」というサイトを立ち上げました。このサイトでは、日本で手軽に入手できる食材を使ったハラール料理レシピを紹介しています。
掲載レシピには、私自身が考えたものもあれば、私が教鞭を執っている文教大学の学生たちから募ったものもあります。
ビジネスに直結させることは考えていませんが、「ハラールにも精通した管理栄養士を育成したい」という考えで運営しているサイトです。

ハラールの研究をする中で出会った、非常に印象深い出来事があります。
1つは、大阪にある淀川キリスト教病院が、院内にハラールキッチンを作ったと聞き、取材した時のこと。
ハラールな食材であっても、禁止されている食材と同じ器具で調理されたり、保管されたりすることで「汚染」され、ハラールではなくなってしまいます。病院はハラール食専用キッチンを新設。ハラール食以外の調理とキッチンを分けることで、汚染を完全に防ぐことにしたのです。
日本国内のムスリム人口は約20万人。関西圏に限定すればその半分以下ですから、人口としては非常に少ない。しかし淀川キリスト教病院は、入院したイスラム教徒に適切な食事を提供するため、ハラールキッチンを設置したのです。多様性に配慮した、非常に素晴らしい対応だと感銘を受けました。

2017年 ガジャマダ大学での講演

もう1つは、インドネシアにあるガジャマダ大学(Universitas Gadjah Mada)での体験です。インドネシアは、国民の9割がイスラム教徒。食品加工について研究をしている学生へ、日本におけるハラール食品の現状について講演しました。
学生たちは、毎月ハラールについての勉強会をしています。日々、新しい食品が登場するため、ムスリムであってもハラールかどうかを判断することが難しい。そこで、毎月の勉強会で議論しているのです。このような議論自体が、イスラム教の信仰に繋がっているのだと感じました。

ハラールを日本に根付かせたい

私は2019年に『きみのハラール、ぼくのハラール』(幻冬舎)という小説を出版しました。食品会社で働く男性の管理栄養士と、マレーシアからやってきた女性との恋愛ストーリー。細かく見ればハラールとは言い切れないものが、ハラール食品として商品化されてしまうことに気付く管理栄養士と、ハラールが徹底されていない日本での生活に苦しむマレーシア人女性の様子を描いています。
「ハラールの基準」は人によって違う。私は、この物語をテレビドラマ化したいという夢があります。

2010年に、エアアジアがマレーシアのクアラルンプールと東京間で定期便を就航し、少しずつイスラム教徒の方が日本へ旅行をするようになりました。日本でハラールブームが起きたのは、それから2年後の2012年頃。この頃になって、ようやく「ハラール」という言葉だけは認知されるようになりました。
コロナ禍へ突入し、東京五輪も海外から観客を受け入れない形での開催となったため、ハラール食品が国内でのビジネスとして成熟するにはまだ少し時間がかかるかもしれません。しかし、私は日本人が持つハラール食品への心理的なハードルをなくしたいと考えています。

日本人は、宗教的なことについて目を背けてしまいがちですが、ガジャマダ大学の学生たちのように、ハラールを日々理解しようと勉強する姿勢は大切だと思います。
日本は仏教、キリスト教などを、日本風にアレンジしつつ取り入れて来ました。今は日本にイスラム教徒が少ないために、敬遠しているかもしれませんが、遠くない未来には、イスラム教も日本風にアレンジされ、日本に根付くと考えています。

将来的には、ムスリムが安心して訪れてもらえる環境を、日本に作り上げたいですね。今は、そのための土壌を作っているところです。

<企業概要>
会社名:株式会社カンリエ
本社所在地:東京都品川区西五反田一丁目26番2号 五反田サンハイツ911
事業内容:管理栄養士のキャスティング/企業や飲食店向けメニュー開発やレシピ監修などコンサルティング/出版プロデュース/イベント・講演の企画運営
公式サイト:株式会社カンリエ

参考サイト:
HALAL RECIPES JAPAN
きみのハラール、ぼくのハラール


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