工場敷地にモスクを建設、松山鋼材とインドネシアを結ぶ強い絆
鋼材の加工・販売業を営む松山鋼材株式会社では、1997年からインドネシア人技能実習生を受け入れています。
実習生から「お父さん」と呼ばれるほど親しまれている向後社長に、創業時のご苦労や実習生との絆などお伺いしました。
18歳での起業、「松山」の屋号に込められた想い
松山鋼材は1965年に創業した会社です。「松山」という屋号は祖父と父が事業を営んでいた時から使っていたもの。私が幼い頃に廃業せざるを得ない状況になり、その後は苦しい生活をしていました。そんな中で湧き上がってきたのは「事業を興し、屋号を復活させたい」という想いです。そして18歳で起業。松山鋼材という社名により、悲願だった屋号を復活させることができました。
創業当初に行っていたのは鋼材の販売のみ。「鉄」の事業を始めたのは、近隣に鉄屋がなかったから、というだけでした。資本も知識もありませんでしたから、当初は苦労の連続です。しかし、復活させた屋号を守りたいという想いで、どんなに苦しくても耐え抜きました。
私が行なったのは「東京に鋼材を仕入れに行き、遠方の顧客へ広く販売する」という販売方法。他社が嫌がる手間の掛かる販売手法を採ったことで、自社の商圏に競合がいない状態を作り出すことができました。
1988年からは鋼材の「加工」にも事業を拡張し、現在の業態に繋がっています。
インドネシアとの絆
松山鋼材とインドネシアとの結び付きは非常に強いですね。
これまでに松山鋼材が受け入れたインドネシア人技能実習生は、100名を超えました。現在、25名のインドネシア人が働いており、そのうち21名が技能実習生、4名が正社員です。
インドネシア人技能実習生の受け入れを開始したのは、1997年のこと。受け入れにあたっては、千葉県に相談をし、実習生送り出し機関の紹介を受けました。2012年には、積極的に優れた取り組みを行い、模範となる技能実習を行っている会社を表彰する「外国人技能実習制度ベストプラクティス表彰特別賞」を受賞しています。
2013年にはインドネシアのスマトラ島メダン市に、現地法人「CV.MATSUYAMA INDONESIA」を設立。インドネシアでCADデータを制作し、松山鋼材でそのデータを基に加工する、といった形で業務提携をしています。
インドネシア人の方たちは、明るくて素直、そして穏やかです。
2011年の東日本大震災では、本社がある千葉県旭市飯岡の町は津波により大きな被害を受けました。その時、以前技能実習生として働いていたインドネシア人が、母国から連絡をくれたんです。「お父さん、大丈夫?」と。
私は、技能実習生を我が子のように思っているのですが、彼らも私のことを「お父さん」と呼んでくれるんですよ。技能実習の期間を終え、帰国した後にもかかわらず、連絡をくれたことに感動しました。
震災が落ち着いた後、逆に彼らが今どうしているのかが気になり、私は初めてインドネシアを訪れました。その時、かつて松山鋼材で働いてくれていた元技能実習生が、国中のあちこちから集まって大歓迎してくれたんです。本当に嬉しかったですし、彼らとの絆がより深まったと感じています。
工場敷地にモスクを建設
ムスリムの技能実習生を受け入れるにあたって、困難だと感じたことはほとんどありません。強いて言うならば、食事ですね。従業員向けの弁当発注や、実習生と一緒に外食する際に、ハラールかどうかを注意するようになりました。言語の違いでも多少、難しいと感じたことはありますが、特に弊害にはなっていません。
逆に、彼らに対して申し訳なく感じたのは、受け入れ当初に、お祈りの場を用意できていなかったことです。
ある日、実習生の1人から「プレハブを買ってもいいか」と相談を受けました。私は、これを断りました。大切なお祈りを、外部から購入したプレハブ内でさせる訳にはいかないと思ったからです。せっかくお祈りの場を用意するのなら、自分たちで立派なモスクを建てようと考えました。
私が建設する場所とデザインを考え、実習生だけでモスクを施工。建材は、日本製鉄の良質な建材を使用しました。完成した「森のモスク」を見た時、私は胸のつかえがとれたような気がして、ほっとしたのを覚えています。
松山鋼材のこれから
復活させた「松山」のブランドを代々継承していくことは、私の最も大切な役目だと考えています。
コロナ禍でインドネシアからの技能実習生の入国は一時的に止まっていますが、これは時間が解決してくれるものなので、あまり心配していません。これからも、インドネシアから受け入れて来た技能実習生や、その兄弟、子供たちとも、末永く友好関係を持ち続けたいと思っています。
<企業概要>
会社名:松山鋼材株式会社
本社所在地:〒289-2705 千葉県旭市飯岡1767
事業内容:一般鋼材、二次製品販売、鉄鋼一次・二次加工、太陽光発電パネル向け架台の設計製作
公式サイト:松山鋼材株式会社