竹由来の衛生剤・食品添加物の日持ち向上製品で東南アジアのハラール市場に挑戦するタケックス社
竹を原料とした除菌剤や食品添加物などの研究開発及び製造販売を手掛けるタケックス社。アルコールの一種であるエタノールを含む製品でありながら、JAKIMのハラール認証を取得し、マレーシアをはじめとする東南アジア市場において、衛生先進国である日本品質の「ハラール衛生剤」「ハラール日持ち向上製品」を展開してきました。
今回、タケックス株式会社/株式会社タケックス・ラボ の岡田久幸社長へインタビューする機会を得て、製品開発から東南アジア・イスラム市場での販路開拓、コロナ禍における現在と今後の展開についてお聴きしました。
竹との出会い
岡田社長は、実家が竹細工を生業にしていたこともあり、竹との関りが深く、「竹の持っている特性を肌感覚で知っていた」と言います。そして岡田社長は十代の頃、大病を患ったことを機に、病院での生活を余儀なくされました。病院で過ごす毎日の中で、食生活における安心・安全の大切さに気付いたと言います。
そして病床から、化学製品由来の食品添加物による影響でアレルギー反応が出ることなど、「天然由来である竹の成分を使って代替できないか」という考え、研究開発に思いを馳せていました。
治療のために一般的な高校生活が送れなかった一方で、周りを見渡すと友人らは着実に自分の目標とする道を歩み出していました。青春を謳歌する周囲の様子を横目に、「生き抜いた足跡を残したい」との一心で、竹の特性を活かした製品開発とその事業化に向けて情熱を注ぐことになったのです。
この時、岡田社長は20代前半という若さでした。
竹の研究と製品開発
ベンチャー企業ゆえに開発資金を集めることも大変でしたが、岡田社長の一心不乱に取り組む様子を見ていた周囲の人たちからの支援によって事業が補強されていきました。一方で岡田社長によると、何よりも苦労し、時間を要したのが、「竹の成長に関する基礎研究」でした。
竹は、研究開発において効果が期待していたほど出ない時と、しっかり出る時との差が激しかったのです。そしてこれこそが一番の課題として立ちはだかったのでした。
身近な植物である竹については、生態に関する文献こそあったものの、当時はサイエンス視点で研究している機関など殆ど無かったのです。
「竹の子の親勝り」という諺にもあるとおり、竹の成長は早いことが知られています。地下茎で繋がっている筍は、約60日で20m近くまで成長します。この急成長を支えているのが、親タケから筍に送られる成長成分。研究結果に大きなムラが発生するのは、この成長成分の分泌において一定でないことが原因となっていたのでした。
「竹は期待をあっさりと裏切ることもあり、逆に凄い感動をくれる。大変クセの強い植物なんです」。そう岡田社長は語ります。
竹に関する様々な研究を進め、現在では「竹のことならタケックスに訊こう!」ということで、多くの企業や機関から、抗菌・酸化抑制・匂いを抑える効果など、竹にまつわる研究開発の駆け込み寺的に問い合わせを貰うことも多くなったと言います。そう、タケックスは、竹研究のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築き上げたのです。
東南アジア・イスラム市場への進出
その後、竹の抗菌成分を含有させた衛生剤・日持ち向上剤を日本国内での販売に漕ぎ着けました。しかし、日本国内では既にこの分野は成熟市場。「同じ経営資源を投入するのであれば、急成長バッファの獲得に向けたい」。そう考えた岡田社長は、海外進出を心に決めます。
目を付けたのは東南アジアのイスラム市場。
世界に目を向けると、イスラム教徒(ムスリム)は2050年までにキリスト教徒を抜いて世界一の人口を擁する宗教になると言われています。
また、温暖多湿で雑菌の繁殖しやすい環境が広がり、大きな皿で手を使って食事する習慣なども、衛生面の向上を働きかける上で大きな潜在需要があると踏んだのでした。
一方でムスリムと言えば注意しなければならないのが「ハラール」です。アルコールを禁忌とするイスラム教の戒律においては、衛生環境の向上を謳う地道な啓蒙活動をし続けることが欠かせませんでした。
当時はハラール認証を受けているアルコール消毒製品が存在しておらず、タケックス社の現地スタッフでさえも「アルコール製品のある倉庫に入りたくない」という声が上がっていました。
まず取り掛かったのは、マレーシアのムスリムに対して、日常生活を送っている環境下の実態がどのような状態にあるのか?を分かってもらうこと。雑菌は目で見ることのできない小さな存在です。それを把握してもらうためにも、「状況の可視化」が一番分かり易いと考え、取り組みをはじめたのでした。
この啓蒙活動は、マレーシア政府系機関、NGOの支援を仰ぎながら、イスラム系の小中学校・大学を中心に協力を得ておこなわれています。
また、コールドチェーンが整備されていない現地の様子についても報告を受けており、「食品の廃棄ロス」および「賞味期限の延伸」に伴う新たなビジネスの可能性にも着目したとのことでした。
いずれの場合においても製品化と販売を想定すると、とりわけマレーシアをはじめとする東南アジア市場では、日本との物価差に開きがあるため、日本製品は現地で流通している同ジャンルのものと比べて割高感が出てしまいます。
時には「生命」に関わる衛生関連製品だけに、「似たような効果が出れば何でもいい」のではなく、安心・安全が科学的・疫学的なエビデンスに根拠を持ち、それらがしっかりと担保されていることを謳い続けることで、価格志向への対抗を図っていきました。
安心・安全の担保と新たな付加価値
2021年、インドネシア、マレーシア、タイといった東南アジアでは「COVID-19(新型コロナウィルス感染症)」が猛威を奮っていたことが連日のニュースメディアでも取り上げられています。衛生関連製品の需要とそこに向けた意識は、これまでとは全く異なるステージに入っています。そうした消費者の意識や声を反映させるかのように、同社製品については、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への竹由来とするモウソウチク抽出物含有アルコール製剤の有効性が報じられたことで、新たな付加価値を高めるに至っています。
岡田社長によると、イスラム市場での販売については、BtoB、BtoCの両軸で展開するも、今のところ販売規模が大きいのはBtoB。そして最近ではWEB販売にも注力をしており、東南アジアのECモールの2強であるShopee(ショッピー)、Lazada(ラザダ)にも出店済となっています。
BtoBの拡大では現地ディストリビューターとの連携が欠かせません。しかし、販売店での棚場を確保する際にフィーを要求されることや、独占販売を条件として提示されることなど日常茶飯事…。日本と比べると商習慣の違いなどから特殊な市場となっています。
そこでタケックス社は、メーカーとして自身でハンドリングできるよう、他社製品との明確な差別化を図ることでブランド力を上げ、販売店側に「置かせて欲しい」と言わせるような製品作りと提案力の強化を図ったのです。
例えばタケックスの日持ち向上製品を使うことで、賞味期限を3日、5日、7日…と延伸させることができます。これにより廃棄率の改善に繋げることや、輸出に不適だった食品を日持ちさせることにより、新たな収益源に繋げるといった提案が出せるのです。こうした新たな付加価値を生み出すことで、価格競争に巻き込まれない製品としてのブランディングを図っています。
コロナ禍での市場と今後の展開
日本国内の市場において衛生剤は、これまで飲食店・ホテル・結婚式場などが主要な取引先でしたが、コロナ禍によりこれらジャンルでの需要は大きく減少しています。そしてBtoC市場に目を向けると、全体的に急拡大中である一方で、このジャンルには他業種からも多くの新規参入業者があります。こうした製品に埋もれることを避け、価格競争に巻き込まれないよう明確な差別化を打ち出したブランディングの強化が欠かせません。
一方の食品添加用の日持ち向上製品については、飲食店・ホテル業界が一斉にデリバリーやテイクアウト事業へ乗り出していることもあり、急速に需要が高まっています。タケックス社の製品は、調味料と同じ感覚で使用してもらえるため、納品先から寄せられる声も好感触。
温暖化傾向が強くなっていることもあり、夏の今だけでなく、冬に差し掛かる時期になっても暫くこの需要が見込むことができそうです。
また既存製品以外の展開においては、子供向けやペット向けといった需要も求めたセグメントの細分化策を講じているとのことです。
そして海外市場への展開では、現在のマレーシア、インドネシア、シンガポール、タイに加えて、所得水準が高く、人口8,300万人を擁する中で98%がムスリムである「トルコ」市場を目指す計画があるとのことでした。
いずれは中東市場にも進出したいと考えているものの、コロナ禍においてマーケティングなどの活動に制限がある中では進展もままならないのが現状。進出したい国のことをしっかり「知る」ことから始めなければ戦略さえも立てられません。歯がゆい状態にある心境を語って頂きました。
地球規模で未曽有の事態となった今回のコロナ禍。世界中のあらゆる人・企業・組織がその影響を受けています。
岡田社長は、「こういう時期だからこそしっかりと感染対策をおこない、備える必要があります」「衛生関連の製品は、価格志向が強いとどうしても安全面・品質面において何かを置き去りにせざるを得ません。確固たるエビデンスある当社の製品をイスラム市場に届けることでムスリムの皆さんの安心・安全に対してお役に立ちたい」と語り、今回のインタビューを終えました。
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