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グローバルハラール化粧品市場の最新トレンドとビジネスチャンス

Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。

日本の化粧品は、アジア市場では有名化粧品の一角を占めています。近年のインバウンドや越境ECブームで、日本化粧品を求める多くの外国人消費者、特に中国人消費者の様子をご存じの方も多いと思います。グローバルハラール化粧品市場に目を向けてみると、韓国や中国化粧品が急伸長しています。グローバルハラール化粧品市場における日本化粧品のビジネスチャンスについて、考えてみたいと思います。

インドネシアの化粧品販売店

拡大が続くハラール化粧品市場

世界のハラール化粧品の消費額は、ムスリム人口の増加やイスラム諸国の経済発展に伴い、2019年の消費額 は約7兆2,520億円(660億米ドル)となりました。その成長率は、2018年度と比較して3.4%増となりました。パンデミックの影響は予想されるものの今後も順調に成長を続け、2024年には約8兆3,509億円(760億米ドル)に増加すると予測されています。

ハラール市場の化粧品輸入国

輸入国輸入金額人口GDP(一人あたり)
インド約6,593億円
(60億米ドル)
13億7680万人約23万9,000円
(2172米ドル)
インドネシア約4,395億円
(40億米ドル)
2億7020万人約44万4,000円
(4038米ドル)
マレーシア約4,395億円
(40億米ドル)
3,275万人約123万3千円
(11,218米ドル)
トルコ約4,395億円
(40億米ドル)
8,361万人約98万4,500円
(8,958米ドル)
ロシア約4,395億円
(40億米ドル)
1億4,617万人約110万3,000円
(10,037米ドル)

総人口だけでなくムスリム人口も少なくないインドが、最大のハラール化粧品輸入国となっています。次いで、世界最大のムスリム人口を有するインドネシア、一人あたりGDPの高いマレーシア、トルコ、ロシアが同額で続いています。

ハラール市場への化粧品輸出国

輸出国輸出金額主な輸出先
フランス約2,748億円
(25億米ドル)
サウジアラビア トルコ UAE
UAE約1,979億円
(18億米ドル)
サウジアラビア バーレーン オマーン
ドイツ約1,099億円
(10億米ドル)
サウジアラビア トルコ UAE
米国約1,033億円
(9億4千万米ドル)
インドネシア マレーシア UAE
インド約924億円
(8億4千万米ドル)
サウジアラビア イラン UAE
主なハラール市場の化粧品輸出国

イスラム市場への主な化粧品輸出国には、上位にフランス、ドイツ、アメリカの欧米勢が登場しています。ハラール市場では、欧米化粧品のブランドが確立しています。ドバイの友人によれば、「特にヨーロッパブランドは、中東での歴史も長く、高級品としてのブランディングが確立している。アジアの化粧品が高級品として認知されることは、なかなか難しいのではないか。」と言っていました。UAEは、関税政策や物流インフラの面から、中東との化粧品輸出のゲートウェイとなっています。

グローバルハラール化粧品の最新トレンド

次に、グローバルハラール化粧品の最新トレンドについて検討しましょう。

トレンドキーワード

  • ナチュラル
  • オーガニック
  • Cruelty-free(動物実験ナシ)
  • ハラール認証

ハラール化粧品市場におけるトレンドも、世界のトレンドと大きく変わりません。イスラム教では、動物肉やアルコールへの忌避が存在します。そのため、ハラール認証には動物性原料とアルコール使用に対する厳格な基準が存在しており、ナチュラル、オーガニック、Cruelty-freeと親和性が高いと言えるでしょう。

原材料のハラール認証取得

原材料のハラール認証取得が拡大しています。アジア市場の多くの国では、ムスリムとそれ以外の信徒が、歴史的に混住していることが一般的です。ASEANの経済的統合を見据えて東南アジア市場では、ムスリムと非ムスリムの両方に販売できる商品への注目が集まっています。その結果、原材料のハラール認証取得が進んでいるようです。インドネシアでは、ハラール製品保証法の施行により、2024年から化粧品にハラールかどうかの表示が必須となります。また、ハラール商品と表示するには、ハラール認証取得が義務付けられます。

総人口ムスリム人口比率
インドネシア約2億7,020万人約2億3,490万人約86.7%
インド約13億7,680万人約1億9,576万人約14.2%
マレーシア約3,275万人約1,998万人約61.3%
アジアの主な化粧品輸入国のムスリム人口

パンデミックによる売れ筋商品の変化

既に皆さんも実感されているように、COVID-19のパンデミックによって、私達の行動パターンは変化しました。それに伴って、ハラール化粧品のニーズが変化しています。

  • 香水やフレグランス製品の需要低下
  • マスク着用機会の増加によりリップスティクやリップグロスへの需要低下
  • 手やフェイス向けのクリーム製品の重要増加
  • フェイスマスク等の自宅でできるトリートメント商品への需要増加

パンデミックの影響からの回復

ハラール化粧品市場のパンデミックの影響からの回復は、国内市場が先導し、その後地域市場が回復すると予測されています。アジア市場では、マレーシア、インドネシア、インドが、市場回復を先導すると予測されています。

グローバルハラール化粧品市場のビジネスチャンス

ここまで検討してきたグローバルハラール化粧品市場の消費者トレンドと現在の状況から、次のビジネスチャンスを考えてみましょう。

Something for Everyone

世界的なレイシズムに対する社会意識が高まる中、特定の人種に限定されない化粧品へのニーズが注目されています。ユニリーバは、美白クリームの商品名を、Fari and lovly からGlow and lovelyに変更しました。グローバルハラール化粧品市場においては、2030年には人種にとらわれないブランドや製品がメインストリームになると予測されています。

モデストファッションとのクロスセリング

ムスリム向けの肌の露出を極力抑えた衣料品(モデストファッション)とハラール化粧品のクロスセリングによる相乗効果が、確認されています。この傾向が続けば、ハラールファッションブランドが、ハラール化粧品の新たな販路として確立するでしょう。

New Normalに対応した新しい付加価値商品

既に検討したように、リップクリームやリップグロスの需要が落ちている一方で、手や顔用のクリームや自宅でできるトリートメント商品(フェイスマスク等)への需要が伸びています。インドネシアのWardah社は、ブルーライトを防ぐハラール認証フェイスクリームを発表しています。このような、新しい付加価値を持った商品の需要拡大の可能性があります。

国内ブランドへの投資

パンデミックによるグローバルサプライチェーンの混乱から、国内市場での生産や販売により関心が高まっています。それに伴って、国内化粧品製造に投資が向くと考えられています。一方で、政府による国内化粧品保護政策に対する懸念が発生しています。インドでは、アーユルベータ化粧品振興のための保護政策がとられています。

日本企業の2つのビジネスチャンス

最後に、グローバルハラール化粧品市場における日本企業のビジネスチャンスについて、分析データだけでなくマレーシア、インドネシア、ドバイで見聞きした消費者行動も考慮して、考えてみましょう。

地元企業との技術協力

最終製品としての日本製化粧品の知名度は、一部の商品やブランドを除き、東南アジアでは高い物の、中東ハラール市場では高くありません。ブランド認知を向上させるためには、時間と高額のコストがかかります。一方で、日本企業製品の品質や完成度の高さは、世界中で認知されています。

そこで、化粧品製造の高度化や品質管理等の分野での技術協力を行い、地元企業と共同で製品を供給する方法があります。特にアジア企業は、日本企業との技術的協力に積極的です。日本企業側は、海外進出リスクを低減できるとともに、米ぬか等日本独特の素材を生かす道を開くこともできるでしょう。パンデミックによる地元回帰のトレンドとも、合致しています。

ハラール認証取得

既に動物性原材料やアルコールを使っていない商品をお持ちの場合には、新たにハラール認証を取得して市場開拓を目指す方法があります。マレーシアやインドネシアでは、日本企業がハラール認証取得製品発表のニュースが、たびたび取り上げられます。特に東南アジアのハラール市場では、ハラール認証取得は良いプロモーションとなります。一方で、国際的に認知されているハラール認証の取得には、それなりのコストがかかります。コストと可能性を比較してメリットがあるのであれば、挑戦する価値はあるでしょう。

商品価格の高さは課題なのか

化粧品だけでなく日本製品を輸出する場合、販売価格の高さが大きな課題となります。輸送費や関税等もかかりますから、日本より可処分所得の低い国では、販売が難しいのは事実です。

一ヶ月の化粧品消費額
日本のZ世代4,876円
インドネシアのZ世代約1,500円から3,700円
( 14 -34 米ドル )

そこで日本とインドネシアのZ世代における一ヶ月の化粧品消費額を、二つの調査データから比較してみました。調査方法が異なることから単純には比較できませんが、日本人の消費額と比較しても、日本メーカーの化粧品に、全く手が出ないというわけではなさそうです。

年齢が上がれば、かれらの消費額は増加します。マレーシアやインドネシア市場であれば、現地価格に対応できるビジネススキームを考えることによって、新たな販売機会創出の可能性は十分にありそうです。

参考

Global Islamic Economy Report 2020
JETRO
外務省:国別・地域
7 HALAL BEAUTY BRANDS TO ADD TO YOUR BAG
Skin lightening cream ‘Fair & Lovely’ to change name after backlash
化粧品の平均購入金額と購入場所をアンケート調査2021年

JL Connect Malaysia SDN BHD / ディレクター 橋本 哲史
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。

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