ハラール市場でのご当地グルメのポテンシャル

Salam Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。

インバウンドが注目される以前から、海外では日本食は注目されていました。それはハラール市場でも同じです。日本政府は、2030年に6,000万人の外国人観光客を誘致する目標を掲げています。訪日外国人の期待の一つは、本場の日本食です。それはムスリム旅行客でも同じです。日本でも海外でも、日本食はムスリム消費者を魅了するコンテンツの一つなのです。今回のコラムでは、次の日本食として期待されるご当地グルメの可能性について考えてみました。

フードコートのたこ焼き屋台(インドネシア)

ご当地グルメの可能性

寿司、鉄板焼き、ラーメン等が海外で広く消費されるにしたがい、次の新しい日本食への需要が高まっています。訪日旅行のリピーターからは、今回の旅行では〇〇が食べたいというお話をお伺いすることもあります。ご当地グルメは、このような需要に応える新しい日本食の一つなのです。

ご当地グルメを考える二つ評価軸

ハラール市場でのご当地グルメの可能性を検討するために、次の2つ視点を設定してみましょう。1つはハラール対応に不可欠な動物性原材料、もう1つはムスリム消費者が日本食を消費する場面です。

動物性原材料

ムスリムには、宗教的な理由による動物性原材料の忌避が存在しています。それは豚だけでなく、捕食動物や定められた方法以外で屠畜された食肉にも存在します。食品のハラール対応において動物性原材料は、最も重要なポイントです。

アルコールにも、同様に忌避があります。日本料理の多くには、調味料として日本酒やみりんが使われています。日本酒やみりんについてこのコラムでは、主材料ではないので一旦検討には加えません。

消費場面

ご当地グルメが消費される場面には、次の2つが想定されます。1つは訪日して旅行先で、もう1つは日常生活の中でです。前者は旅行中という非日常として、後者は日常としてとらえることができます。

インバウンド

旅行中のムスリムには、可能な限りハラールを守ることが求められます。その一方で、旅行中にはさまざまな異文化体験をしたい欲求が高まります。食事もその1つです。そのためか、訪日中のメニュー選択において、日常生活より冒険的になる傾向があるように見受けられます。

海外日本食飲食店

日常生活における彼らのメニュー選択は、旅行先より保守的になるようです。もともと食文化は保守的なのですが、それに加えて、日本食は豚やアルコールを含むことが広く知られているので、日本食自体を避ける人も見受けられます。日本人のように、様々な外国料理を気軽に楽しめる国や地域は、実はあまり多くありません。

各地のご当地グルメは200以上

インターネットを使ってご当地グルメについて探索すると、200以上のメニューが認知されているようです。Japan Web Magazineには、232のご当地グルメが紹介されています。このコラムでは、このデータを元に検討しました。

主なメニュー

  • 丼物: 36
  • お好み焼き: 36
  • おかず: 23
  • ラーメン(汁あり): 17
  • うどん(汁あり): 16
  • 焼鳥: 11
  • デザート: 10

もともと日本人向けのメニューですから、お手軽な価格で食べられる食事メニューが多いようです。インバウンド向けのメニューとしては、ムスリム旅行者のニーズに合致しているでしょう。一方海外で展開する場合には、現地の食文化に受け入れられるのかを、しっかり検討する必要がありそうです。

主な原材料

  • 豚肉: 103
  • 牛や鶏等の動物性原材料: 40
  • 野菜や魚等: 89

約半数のメニューは豚肉を主原料としていないので、調味料等の工夫でハラール対応は可能と考えられます。とんかつのように主材料に豚肉を使っているメニューでは、主材料を変更することによりハラール対応自体は可能と考えられますが、オリジナルとは別メニューとなってしまします。

海外ハラール市場で人気の日本食

世界のハラール市場においても、日本食は一般的メニューとして浸透しています。特に東南アジア市場では、人気が高いです。

マレーシア

ラーメン、鉄板焼き、たこ焼き、どら焼き、おでん等が、広く受け入れられています。たこ焼きは、スーパーや露店の市場でも購入できる程の人気です。日本ではムスリムにもラーメンが浸透しているとの報道も見かけますが、豚を主原料としているイメージがあり、まだ敬遠されているように見受けられます。

インドネシア

マレーシアより多くの日本食飲食店を見かけます。HokBen(日本式弁当)、吉野家(牛丼)、丸亀製麺(うどん)、ペッパーランチ(焼肉定食)等が、全国展開しています。食べ放題のシャブシャブも良く見かけます。私の味覚では、マレーシア料理と比較して素材を活かしたメニューが多い事が、日本食が広く受け入れられている要因だと感じています。

東南アジアハラール市場には、ご飯+おかずというスタイルや日本のラーメンのようなスープ麺が一般的である事が、日本食の受入れを容易にしているようです。

中東・トルコ

ヨックモック(焼き菓子)のように、定番となっている日本食もあります。既に現地に同様のお菓子があることが、受け入れの素地になったと考えられます。一方で、現地人向けの日本食飲食店は、まだ多くないようです。トルコで日本食進出の調査を行った方によれば、うどんやラーメンのような汁に入った麺料理を受け入れる可能性は、非常に低いとのことでした。

中東やトルコにおいては日本との食文化の相違が大きい事もあり、ご当地メニューの参入には、大きな工夫が必要と思われます。

ご当地グルメのビジネスチャンス

敬虔なムスリムでハラール産業に従事しているマレーシア人の友人は、マレーシアでは、ハラール認証店でも日本食飲食店には入りません。一方で、日本を訪れた際には、日本人ムスリムオーナーのラーメン店を頻繁に利用します。このお店は、ハラール認証を受けていません。

一貫性が無いように思われるかもしれませんが、私の目の前では、同様の事例が良く起こります。ムスリム消費者が日本食を選択するかどうかは、その場面によって変わる可能性があります。インバウンドなのか海外進出なのか、主原材料、メニュー構成等を考慮した、ビジネスモデルの検討が必須です。

美味しいハラール日本食

先日、マレーシアの大学のセミナーに参加しました。そこで学生から、日本のハラール日本食はオリジナルと同じ味なのかとの質問を受けました。訪日ムスリム旅行者は、日本では本物の日本食を食べたいと良く言っています。

ハラール料理を提供している日本人事業者からは、「ハラール日本食は、調味料が異なるので美味しくできない」「ハラールな食事はムスリム旅行者の要望だから、ハラールであれば日本食でなくても良い」との考えを聞くこともあります。しかしムスリム消費者の声に耳を傾ければ、この考えは間違っています。

インバウンドや海外日本食飲食店で主な顧客となる東南アジア在住のムスリムには、訪日旅行のリピーターや留学経験者も増えています。このような日本食経験が豊かなかれらを満足させる美味しくて新しい次の日本食として、ご当地メニューにはビジネスチャンスがありそうです。

参考

日本のご当地グルメ

JL Connect Malaysia SDN BHD / ディレクター 橋本 哲史
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。

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