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ムスリム観光誘致、その先へ 飛騨高山フードバリアフリー協議会 清水大地氏

4月6日にハラールをはじめ、コーシャ、アレルギー対応でフードバリアフリーを推進することを目的に、「飛騨高山フードバリアフリー協議会」が設立されました。
ムスリムフレンドリーな地域として知られる飛騨高山で、今後どのようなビジョンを描いているのでしょう?

「飛騨高山フードバリアフリー協議会」会長の清水さんは岐阜県北部、高山市内の食品卸会社「清水弥生堂」の4代目。
Groovy Japanは昨年、ラマダン期間中にとる日没後の食事(イフタール)用に、ジャパンダアワセンターを通じてムスリムの皆さんへハラール飛騨牛100人前を贈呈しました。
実は、この際のハラール飛騨牛が、清水弥生堂さんから購入したものだったのです。

そんなご縁もあり、清水さんにインタビューさせていただきました。高山市はどのような経緯でムスリム向けのハラール対策やフードバリアフリーに取り組む活動をはじめたのでしょう?


こんにちは、清水弥生堂の清水です。
弊社は高山市内のスーパーやホテル・旅館に食材料や製菓材料を販売しており、おかげさまで2016年に創業100周年を迎えました。

観光の街、飛騨高山

弊社のある高山市は、城下町の面影を残す古い町並みに加え、スキーや温泉も楽しむことができる観光地です。飛騨牛や高山ラーメンといったご当地グルメも人気があります。
1986年に国際観光都市を宣言した高山市には、様々な国・宗教の方が訪れてくださっています。飛騨高山の観光公式サイトは10言語以上に対応していますし、市役所内に「飛騨高山プロモーション戦略部 海外戦略課」というセクションがあるほど。行政としても観光誘致に本気で取り組んでいます。

「ムスリムフレンドリーのまち飛騨高山」の歴史

今回立ち上げた「飛騨高山フードバリアフリー協議会」には、前身となる団体があります。2014年に私が発起人となって発足させた「飛騨高山ムスリムフレンドリープロジェクト」です。
主な活動は、飲食店のハラール対応メニュー開発や、礼拝スペースの整備。また、保存のためのアルコールを使用しない味噌といった、イスラム教の戒律を満たした商品を市内で数多く揃え、「ムスリムフレンドリーのまち飛騨高山」を前面に押し出して活動してきました。

ハラール飛騨牛を使ったメニューの一例

そもそも、私がムスリムの観光誘致に興味を持ったきっかけは、京都に住む知人から「京都ではハラールが注目されている」と聞き、ハラールに関するセミナーを受講したこと。このセミナーに感銘を受け、高山もムスリムの人たちに観光に来てもらえるよう、ムスリムフレンドリーなまちづくりをするべきだと考えるようになりました。

ちょうど、高山市としても東南アジアの観光誘致に力を入れ始めたタイミングでした。高山市の主要産業は観光ですが、冬季の集客には苦戦していました。雪深い地域のため、国内旅行者は冬場にはなかなか来てくれません。
そこで、雪深い地域特性を逆手に取った「雪を見たい外国人」を誘致するという発想から、高山市は主に東南アジア諸国を対象に観光誘致を行う方向に動き始めていたんです。

そんな行政の動きもある中、高山市の観光促進の起爆剤として「飛騨高山ムスリムフレンドリープロジェクト」を立ち上げ、ムスリムの皆さんに楽しんでいただくための取り組みを行ってきました。
いち早くムスリムフレンドリーなまちづくりをしたことで、東南アジアからの旅行客は増加し、念願だった“年間通して賑やかな観光地”となることができたんです。イスラム圏からの観光客は年々増え続け、コロナ禍前には、インドネシア、マレーシア、シンガポールの3ヶ国だけで年間4万人程度が高山を訪れてくださいました。

ムスリム観光誘致の先に見えてきたもの

高山市は「ムスリムフレンドリーな観光地」としての知名度を上げることには成功しました。ただ、高山市を訪れてくれる外国人観光客はイスラム教徒だけではありません。ハラール対応以外にも、食事について注意が必要な方々がいらっしゃいます。

2019年 高山市の国別観光客数
台湾 約10.4万人、中国 約6.2万人、タイ 約5.3万人、香港 約4.8万人、アメリカ 約3.5万人、スペイン 約3.5万人、イギリス 約2.3万人、フランス 約2.1万人、シンガポール 約1.8万人、マレーシア 約1.7万人、イスラエル 約1.3万人、インドネシア 約1.2万人、韓国 約1.1万人など
(参照)平成31年・令和元年 高山市外国人観光客宿泊統計

特に注目しているのは、イスラエルからの約1万3,000人のお客様です。イスラエルからの年間訪日旅行者が約4万4,000人なので、そのうちの約3割が飛騨高山に足を運んでくださっていることになります。イスラエルからの旅行者が多いのは、岐阜県出身の杉原千畝が、第二次大戦中にユダヤ人に「命のビザ」を発給していたことに起因しています。杉原千畝の功績を知る多くのユダヤ人が岐阜を訪れてくださるんですね。

ユダヤ教徒の皆さんをおもてなしするには、ユダヤ教の戒律に基づく「コーシャ」に対応した食事を提供できる体制が必要になります。

また、ハラールやコーシャのような宗教上の理由だけでなく、ヴィーガンの方やアレルギーで食べ物が制限されている方もいらっしゃいます。そこで、「飛騨高山フードバリアフリー協議会」では、前身となるプロジェクトで取り組んできたムスリムへのハラール対応に加え、コーシャとアレルギー、ヴィーガンへの対応も進め、誰でも食事を楽しめるフードバリアフリーなまちづくりを目指しています。

高山市國島市長と「飛騨高山フードバリアフリー協議会」メンバー

「飛騨高山フードバリアフリー協議会」の活動内容

今後、協議会としては「アレルギー対応」「海外販路拡大」「インバウンド」の3つの活動を行っていきます。

アレルギー対応
まずは地元の飲食店や宿泊施設で食物アレルギーへの対応状況をヒアリングしていきます。ヒアリング結果に基づき、各店舗・施設における食物アレルギー対応を、地域内の人たちや観光客に分かりやすくアナウンスしていきます。

海外販路拡大
優れたフードバリアフリー商品を海外にも広めていきます。具体的には、ハラール認証、コーシャ認証取得商品の開発を推し進め、海外での販路拡大を目指していきます。
ハラール認証商品は、国内のパートナーを介し、マレーシアやシンガポールへの販路開拓を現在模索しているところ。コーシャ認証取得商品は、イスラエルでの販路開拓から始めようと考えています。

インバウンド
新型コロナウィルスの世界的な蔓延による影響で、高山市に限らず、当面は海外からの旅行者が回復する目途が立っていません。
しかし、ワクチン接種率の高さから考えると、イスラエルは比較的早い段階で海外旅行が解禁されるのではないかと考えています。その際には、コーシャ認定を受けた商品でおもてなしをしたいですね。もちろんムスリムフレンドリーな対応も続けていきます。

「飛騨高山フードバリアフリー協議会」設立総会

飛騨高山フードバリアフリー協議会
https://www.facebook.com/htfba

会長:株式会社清水弥生堂 清水氏
副会長:有限会社舩坂酒造店 有巣氏
事務局:株式会社Ferme du Soleil 五十嵐氏
メンバー:有限会社飛騨山椒/川尻酒造場/JAひだ/株式会社サラニ
金融機関:十六銀行/飛騨信用組合/高山信用金庫
オブザーバー:高山市役所 飛騨高山プロモーション戦略部 海外戦略課


ムスリムやユダヤ教徒など食の制限がある方々が、そのことを意識せずに観光を楽しむための準備。またそこから派生した商品の海外進出など、清水さんは、先々を見越したアクションを次々と起こしていました。
飛騨高山では、地元企業が主体的に地域活性化に関わることで、商品開発といった企業活動も活発に行われています。観光地としてだけでなく、企業を含めた地域全体としての魅力が増していく、理想的なまちづくりだと感じました。

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