ハラールコスメの魅力、非ムスリムまで注目
こんにちは、Salam Groovy Japan編集部、マレーシア出身のイマンです。
SNSの利用が増え、ニーズが多様化し、それに応えるために美容市場は飛躍的に巨大化しています。その中でも「ハラールビューティー」は、非ムスリムの消費者までをも魅了し、かなりの勢力になっています。今回は、ハラールコスメ市場の大きさ・状況やどんな点に注目すべきかをお話しましょう。
肌の状態は人それぞれであり、同じ肌質を持っていても、必ずしも自分に合うとは限りません。そのため、自分に本当に合うものを探すには、国内外のブランドを調べたり、試したりします。
これは、ムスリム・ビューティ消費者にとっても同じです。自分の肌に合うものを見つけるために、オーガニックやノンアルコール、無添加などの製品を選ぶでしょう。もちろん、どんな商品であっても、ハラール(合法的)でなければなりません。
ハラールコスメ市場の規模はどれぐらい?
コスメ業界には、化粧品、スキンケア、ヘアケア、パーソナル・ケアー、香料などが含まれています。米国のAllied Market Researchのレポートによると、2020年に306億ドルだった世界のハラールコスメ市場は、2031年までに1448億ドルに達し、2022~2031年に15.2%のCAGRで成長すると見込まれています。
ムスリムが世界人口の4分の1を占めていることを考えると、これはあり得る話だと思います。米国のPew Research Centerは、「ムスリム」が世界で最も急速に成長している主要宗教集団と指摘されています。また、2060年にムスリムが世界人口の30%程度を占め、30億人近くになると推測。
地域で見ると、中東がトップシェアを占めています。一方、アジア太平洋地域では、特にマレーシア・シンガポール・インドネシアなどのムスリムが多い国が「ムスリム人口の増加」・「パーソナルケア、ビューティーケアへの関心が高まっていること」により、急速な成長が期待されています。
人口増加のほか、サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦、マレーシア、インドネシアなどでは、ファッションや化粧に対する関心をイスラム教の信仰に結びつけたいという若いムスリム女性の要望も大きな原動力になっています。SNSの利用もこの要望に影響を及ぼしているかもしれません。
マレーシア人のインターネット使用率は、2020年の89.6%から96.8%に増加しています。
マレーシア人のインターネット利用率は96.8%に上昇。スマホでSNS利用が更に浸透
(中略)
続いて利用目的ではSNSがトップで、その割合は実に99.0%を占めています。
マレーシア人の私から見ると、これは驚く話ではありませんね。ほとんどのマレーシア人は、「Facebook」「Twitter」「Instagram」の中から2つか3つを利用しています。3つとも定期的に更新し、活発に使用している人も少なくありません。
したがって、SNSを利用することで、新たなビューティートレンドが生まれ、ユーザーはそのトレンドに乗ろうとし、自分に合った商品を求めるようになるのではないでしょうか。ビューティートレンドに伴い、カラーコスメの需要も伸びると予想されています。サウジアラビア、イラン、UAE、マレーシア、インドネシア等において、若年人口の増加・高い可処分所得・ファッションやメイクアップのトレンドへの関心の高まりなどを抱えている国々は、この分野で成長できる潜在性を持っています。
イード・アル・フィトル(イスラム教の断食月後のお祝い)のような祭事の場合、たくさんのムスリム女性がおめかしするのが好きですからね。そういう時は、カラーコスメを使うのが一般的でしょう。例えば、アイライナーにもカラーバリエーションがあり、最近SNSで見かけたトレンドで新しいアイライナーの付け方も豊富になりましたし、メイクアップ好きならきっと試してみたくなるはずです。
「ハラール・ビューティー」はムスリム消費者だけ?
「ハラールビューティー」なので、当然消費者のほとんどはムスリムですが、面白いことに、非ムスリムの消費者の間でもハラール化粧品のファンが増えてきました。
「ハラールビューティー」とは何か、について見てましょう。
他のハラール製品と同じく、化粧品もハラーム(禁止)成分や原料を一切使用せずに、イスラム法に則って製造されたものでなければなりません。加えて、清潔保持も大事にし、二次汚染を防ぐこともあり、製造施設はハラールでないものを排除し、常に衛生的な環境を保つことが必要です。
コスメ製品に入れられないものの例をいくつか挙げています。
- 非ハラールな動物由来成分および副産物(例:豚、爬虫類など)
- アルコール(濃度によってはハラールであるものもありますが、アルコール飲料のアルコール類は完全にNG)
「ハラール」について、詳しくは文末のリンクより、過去のブログでお読みください。
イスラム法に準拠しているだけでなく、「ハラール・ビューティー」は環境倫理や人道的倫理にも配慮しています。私たち・ムスリムは生き物を傷つけてはならないと信じています。それは、イスラム教において、「動物を拷問したり虐待したりしない」や「必要に応じて、例えば食用として動物を屠殺する際にも思いやりを持って対応する」のが強調されているからです。
預言者ムハンマド(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は仰っしゃいました。「神の被造物に親切にする者は、自分自身にも親切にしているのだ。」
ブハーリおよびムスリムコレクションでアブダッラー・ビン・アムルによる伝承
上記のハディース(預言者の言行に関する伝承)では、動物がアッラー(神様)の創造の一部であるため、親切に対応すべきだということが示されています。そこで、植物や自然環境もその一部に入り、コーラン(イスラム教の聖典)にも「地上で悪を行なってはならない(第7章高壁章56節)」と指摘されています。つまり、地球を壊してはならないということです。
世界中が持続可能性(サステイナビリティー)を追求する中、人々はよりクリーンでエシカルな製品を求めるようになってきています。安全・クリーン・クルーエルティフリー(動物虐待防止)のオプションを探すにあたって、多くの非ムスリムはハラル認証のコスメに目を向けています。Trendalysticsによると、Googleにおけるハラールビューティーの検索は、2018~2019年8月頃に23%上がりました。
さらに、 「(ハラール製品)の対象はムスリムだけではなく、非ムスリムも同じく、ハラール製品を安全で無害な成分を使用していると捉えているからです。そのため、ハーラルビューティー産業は成長しているのでしょう」と、Wardah International Business※(ワルダ国際事業)の代表・Shabrina Salsabilaはマレーシアのメディアとのインタビューで述べていました。
※「Wardah」(ワルダ)はインドネシア発のビューティーブランドです。
ウドゥ・フレンドリーに注目するポイント
イスラム教の信仰に沿ったコスメの需要の中には、原料を超えた製品を必要とする女性たちの声があります。使いながら祈ることができるのか」「祈りに使えるものが欲しい」という声から、「ウドゥ・フレンドリー/ウドゥ対応」コスメが誕生してきました。
「ウドゥ」(Wudu)とは、ムスリムが礼拝やコーランを扱う際、手・顔・足を洗い清める儀式です。その条件のひとつは、水が肌に触れなければなりません。そこで、この儀式や礼拝の妨げにならないよう、水が肌にきちんと届き、肌が呼吸できるようにすることが「ウドゥ・フレンドリー・コスメ」に当てはまります。また、水やガスなどが通過したり、染み込んだりすることができる商品「パーミアブル」(Permeable、透過性)または「ブリーザブル」(Breathable、通気性)のある製品とも言われています。
通気性のある製品は、毛穴を詰まらせないのが大きな特徴です。化粧品は3~5種類以上の製品を組み合わせて使います。一度にプライマー、ファンデーション、コンシーラー、ハイライター、ブロンザーなどを使用する人も大勢います。化粧品をたくさんつけると肌に悪いこともあり、軽いつけ心地でしっかりカバーできる製品が要求されるでしょうね。
ここで、ウドゥー対応のコスメをいくつかご紹介します。
・マニキュア液
一般的に通気性または浸透性があり、水や酸素がポリッシュの1-2レイヤーを透過することができるマニキュア液ということです。こちらはハラール/ビーガン認証取得済みのVivre Cosmetics商品で、フランスのSGS研究所で透水性の認証も受けています。
・アイライナー
Wardah(インドネシア)のジェル系のアイライナーです。毛穴に水を吸い込み、ぬるま湯で簡単に落とせるウォータープルーフ製品。
・ファンデーション
Nour Cosmeticsの毛穴を詰まらせるシリコーンを使わず、オイルフリーで軽いつけ心地のファンデーションです。
ウドゥー対応の商品は、必ずしも水を肌に浸透させるものでなければならないというわけではありません。むしろ、ウドゥをする際に簡単に落とせるような軽い・軽いつけ心地のものがいいというのです。
このように、「ハラール・ビューティー」は消費者層が拡大傾向にあり、活発な市場となっています。また、非ムスリムの消費者にとっても、倫理的な消費行動やより厳しい品質保証基準によって、より広い市場にアピールすることもできます。
将来を見据えた日本のコスメ・ビューティー関連企業にとって、ハラール対応を充実させることは有効な手段となりえるのではないでしょうか。
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