国内ハラール市場の現状
Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。
ハラール市場でのビジネスを考える場合、日本企業には3つのチャンスがあります。そのうち2つは国内。1つは海外です。今回のコラムでは、国内ハラール市場に焦点をあて、その現状について検討しましょう。
在日ムスリム市場人口は推定約20万人
国内のハラール市場を考えるうえで最も重要な指標は、国内に在住するムスリムの人口です。残念ながら、日本には宗教別人口の公式統計がありません。元早稲田大学の店田教授が政府統計等から推定した結果によれば、約20万人とのことです。私自身は約10年程ハラール産業に関わってきましたが、この推定値は私の実感値とも合致しています。
モスクの数は105以上
毎日新聞の記事によれば、全国に105以上のモスクがあります。つまり、在日ムスリムは、全国に広く在住していると推定されます。もちろん、都市部、大学、工業地帯には多く住んでいることが予測されます。
最大の特徴は出身国の多様性
日本ハラール市場の最も重要な特徴は、出身国の多様性です。例えば、マレーシアではムスリムの大多数はマレーシア人ですが、日本では日本人ムスリムはマイノリティです。現在最も人口が多い国は、インドネシアです。次いでパキスタン、バングラディシュ、マレーシア、トルコと続いています。
出身国の多様性は嗜好の多様性
出身国が多様であることは、日本のムスリム消費者の嗜好が多様であることを意味しています。ムスリムが食べることができない食品は、宗教的戒律によってほぼ世界共通ですが、どのような食を好むのかの食習慣は、国や地域によって異なります。つまり、約20万人の日本ハラール市場には、多様な嗜好性を持つ消費者が住んでいるのです。
インバウンド市場は年間推定約70-80万人
国内市場のもう一つの大きな部分が、インバウンド市場です。ムスリム訪日客の多くは、マレーシアとインドネシアからやってきます。前述の研究成果によれば、約95万人と推定されています。私の感覚値では、この数字は少し大きすぎると思います。なぜなら、以前に訪日ムスリムツアーの営業をマレーシアとインドネシアで行っていた際に、訪日旅行の中華系旅行者割合は、それぞれの国の人口比率よりも多いと感じていたからです。私自身は、約70-80万人程度ではないかと考えています。
国内ハラール市場にビジネスチャンスはあるのか?
上記の数字から日本の市場全体とハラール市場の人口を比較すると、ムスリム市場人口は全人口の約0.15%、インバウンド市場は全外国人訪日客の約2.2%となります。国内ハラール市場の現実的な数字をみて、その規模に落胆される方もいらっしゃるかもしれません。
私自身は、この数字が国内ハラール市場にビジネスチャンスがない事を意味しているわけではない、と考えています。当然ですが、そこには多くのビジネスチャンスはあります。しかしながら、ハラール対応さえすれば多くの顧客が訪れるという訳ではありません。どのビジネスでも当たり前ですが、現実に即したビジネスモデルが必要なのです。
参考
世界と日本のムスリム人口」店田廣文 人間科学研究第32巻2号
全国でモスク増加 「何となく不安」の壁超え 36都道府県105カ所 ともに暮らすために 毎日新聞
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。
訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。
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