ラマダーンの経済効果 インドネシア・マレーシアの場合

Groovy Japanを運営するジェイ・ラインのマレーシア法人JL Connect Malaysiaでイスラム市場進出支援に携わっている橋本です。

日本では、宗教的行為である断食で語られるラマダーンですが、その期間中のムスリムの行動変化についてはあまり知られていません。その影響は、社会全体の経済やビジネスにも大きな影響を与えます。インドネシアやマレーシアのラマダーンの社会的影響と、そこから見える日本企業が考慮すべきポイントについて考えてみます。

ラマダーン中のインドネシアのカフェ
店内飲食が外から見えないようにカーテンが掛けられている。

ラマダーンとはどんな1ヶ月?

イスラム教を信仰するムスリムには、五つの義務(信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)があります。ラマダーン月には、そのうちの2つである断食と喜捨を特に行います。その意味から、ムスリムにとって特別な月なのです。

断食

皆さんも良くご存じの断食は、特別の事情のある人(病気や旅行等)を除いて、夜明けから日没まで行われます。

喜捨(ザカート)

ムスリムは、収入の一部を困窮者に施さなければなりません。それがザカート(喜捨)です。義務の一つになっていることから、税金の一形態と捉える解釈もあります。ラマダーン中に行わなければならない最低限のザカートは、それほど大きくはありません。インドネシアでは、3.5リットルの米とされています。しかしながら、それ以上の喜捨が盛んにおこなわれます。

世界銀行によれば、世界のザカートの年間総額は、推定約6000億ドル(約65兆円)にのぼり、その85%がこの期間中に行われます。経済格差が大きな問題となっている現代社会においては、重要な社会的再分配の仕組みになっています。

社交(ブカプアサ・イードフィトリ)

ラマダーン中の日没後には、家族や友人達と特別の食事を行いながら交友を深めます(ブカプアサ)。ラマダーン明けのお祝いであるイードフィトリには、お土産を持参して親類や友人達を訪れます。このような際には、特別な食事でもてなします。

ムスリム消費者行動の変化

このようなラマダーン期間中のムスリム消費者の行動は、それ以外の時期とは大きく異なります。

食品と衣料品の需要が増加

ラマダーン中には、食品と衣類の支出が増加します。2013年のインドネシアでは、食品および衣料品の小売売上高指数が、30%増加しました。マレーシアでは、83%の家庭で食費が50%から100%増加し、その割合は、年間食費の15%を占めています。

イードフィトリの準備

ラマダーン中には、イードフィトリを祝う準備が始まります。新しい服を新調したり、親しい人を訪問するためのギフトを購入しまう。親類や友人達との食事の為に、多くの食品を購入します。

検索ワードに見る関心の変化

イスラム教徒が過半数を占める国の1500人を対象としたソーシャルメディア検索に関する分析によれば、ラマダーン中の主な検索ワードは、食べ物に関するものでした。その割合は女性では44%上昇し、デザートとレシピについて最も検索されました。男性では70%上昇し、バーベキューとエンターテインメントが最も検索されました。

ビジネスへの影響

このようなムスリムの行動は、ビジネスにも大きな影響を与えます。インドネシアでは、ラマダーン前に企業は雇用者に一か月分のボーナスを支給しなければなりません。この臨時収入が、ラマダン期間中の消費を支えています。

インフレーション

ラマダーン中は、食品、交通機関、エンターテインメントの価格が上昇します。食品や衣料品ビジネスにおいては、ラマダーンは、年間売上を確保する重要な一ヶ月となっています。

生産性の低下

インドネシアやマレーシアでは、ラマダーン期間中に労働時間が一時間短縮されます。その結果、GDPが推定約3.8%減少します。パキスタンやエジプトのように二時間の短縮する国では、約7.7%減少します。

労働者個人の生産性は、概算で35-50%程低下するようです。この期間中は、労働より宗教的活動が重視されることが、その要因と考えられています。

株式市場の「ラマダーン効果」

株式市場では、「ラマダーン効果」と呼ばれる影響が確認されています。1989年から2007年までの15ヵ国の株式分析では、株式のリターンが他の時期と比較して、9倍高い事実が発見されました。2016年に行われた同様の調査では、多数派を占める学派による三つの国ごとのグループで、正と負の影響があるグループが、それぞれあることが明らかとなりました。

食品の大量廃棄

近年では、ラマダーン中の食品廃棄が問題となっています。マレーシアでは、一日あたり約2万トンもの食品が廃棄されています。これは、マレーシア人口を一日養うのに必要な食品量の1.5倍となっています。

日本企業が配慮すべきポイントは?

このように普段とは異なるラマダーン中のビジネスについて、日本企業が最も配慮すべき点は、ビジネスのリズムの変化でしょう。マレーシアやインドネシアでは、中東のようにビジネスがほぼ止まってしまう事はありませんが、その進み具合は遅くなります。

特に注意すべきは、公式の祝日と実際に休む期間の不一致です。インドネシアでは、イードフィトリの祝日は2日間ですが、多くのムスリムが一週間程休みます。中華系企業なら大丈夫と思われますが、社内責任者がムスリムで不在となり、アポイントメントや返信が遅れる場合もあります。

実際に、ラマダンや旧正月に現地出張を組んでしまい、困っている日本企業をご支援したことがあります。このリズムの違いについては、日本の社会環境からでは想像が難しいと思います。

参考

Why Ramadan is a special economic season in Indonesia
Ramadan Effect shows religion goes hand in hand with the economy

JL Connect Malaysia SDN BHD / ディレクター 橋本 哲史
Groovy Japan運営会社のマレーシア法人JL Connect (M) SDN BHDのディレクターと、JAKIM戦略パートナー企業のコンサルタントを兼務。
2010年に日本果物のドバイ輸出事業に参画したことからイスラム市場との係わりが始まり、その後マレーシアとインドネシアを起点に現地企業家との事業を行う。訪日ムスリムツアー企画と現地営業、日本と東南アジア間でのビジネスマッチングやマーケティング等を経験する。

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