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豚・アルコールだけじゃない!ハラール商品開発で注意すべきこと

こんにちは、Salam Groovy Japan編集部、マレーシア出身のイマンです。

ハラール商品の開発にあたって、原材料や製造プロセス以外でも、商品名、商品に使われる表現なども、イスラム市場を目指す際に欠かせないステップでしょう。今回は、「ハラール表記・ネーミング(呼称)」で気をつけるべきことをご紹介します。

昨年、ある日本製ハラール商品のパッケージに「Pork(ポーク)」と表示されていたことで、タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシアといった国々におけるムスリム(イスラム教徒)のネットコミュニティーで大騒ぎになったことがありました。

パッケージ表記や商品名において注意すべき点を学ぶために、いくつかの実例を紹介していきましょう。

事例その1:「Bacon(ベーコン)」

ご存知のように、「豚」はイスラム教においてハラーム(禁止)動物の一つとされており、その肉を食べたり、豚由来のものを使用したりすることは禁止されています。したがって、ムスリムは「豚」に手を触れ、豚肉や豚由来を扱う施設・製品など、「豚」に関連することを避けるように非常に注意を払っています。
もちろん、これは酒類(アルコール)を含め、非ハラールなものも同じです。

「ベーコン」は、豚肉から作られている塩漬けした食肉加工製品の一種です。ハラール商品であっても、使った肉によって「ターキーベーコン」「チキンベーコン」など、名称に「ベーコン」が入っている場合が多々目に付きました。

画像はイメージです

「ベーコン」の単語使用は、実際にネット上にあるムスリムコミュニティーの中でしばしば議論になっており、日本国内で私も見かけたことがあります。これを問題視しない・気にしていないムスリムもいる一方で、「『ベーコン』という言葉自体が『豚肉』を意味するので、(ハラール肉を使い、ハラール認証を受けていても)これはNG、認められない。」と指摘する人もいます。

それらを踏まえ、「ベーコン」の代わりに「Breakfast Slices(ブレックファストスライス)」や「Rashers(ラッシャーズ)」といった名称付けに工夫している業者もあります。
ちなみに、日本の「とんこつラーメン」ならば、「クリーミーラーメン」と名づけるなど、豚肉を一切使っていないことを主張するような表現にしている企業もありますよ。

例題その2:「Dog(ドッグ・犬)」

過去にマレーシアで話題になり、海外メディアにまで広がった面白い事例をご紹介します。
2016年度に、米国のファストフードチェーン「Auntie Anne’s」がマレーシア店舗において、ハラール認証を確保するために、プレッツェル生地で包むホットドッグの「Pretzel Dog(プレッツェルドッグ)」を「Pretzel Sausage(プレッツェルソーセージ)」に改名したのです。

画像はイメージです

多くのイスラム学者が、「犬」はイスラム教において不純・不潔なものと見なされるため、差し迫った必要性がない限り、「犬」を飼ったり触れたりしないよう提唱しています。

مَن اقْتَنَى كَلبًا – إلاَّ كَلبَ صَيْدٍ أوْ مَاشِيَةٍ – فَإنَّهُ يَنقُصُ مِن أَجْرِهِ كُلَّ يَومٍ قِيرَاطَانِ

狩猟犬や羊飼い以外の犬を飼う者は、1日の報酬が2キラット(分)減らされる。

イマーム・ブハーリー&ムスリムが述べるハディース(伝承)により

かつて、スンナ派法学における四人の偉大な指導者(学者)の一人であるイマーム・シャーフィイーもこう述べました。

3وَلا يَجُوزُ اقْتِنَاؤُهُ إِلا لِصَاحِبِ صَيْدٍ أَوْ حَرْثٍ أَوْ مَاشِيَةٍ أَوْ مَا كَانَ فِي مَعْنَاهُمْ .

そして、狩猟をする者、農耕用、家畜の放牧用、あるいはそれらと同じような状況にある者でなければ、犬を飼うことは許されないのものです。

シンガポールMUISより

上記のように、イスラム教では狩猟や農作物の保護など妥当な理由があれば、「犬」の使用を認めています。今で言えば、麻薬の追跡、自然災害の被災者の発見、目の不自由な人の手助けなどのために犬を使用することでしょう。

しかし、イスラム教の食事法では、肉食動物、それも牙・爪・指を持つ動物、爬虫類の鱗を持つ動物の肉を食べることは禁止されています。
つまり、「犬」も肉食動物であるため、ムスリムにとってはハラームとなり、食べてはいけないのです。

国によって多少違うかもしれませんが、マレーシアでは「犬」=「ハラーム」という概念がムスリムの間にかなり根付いていて、「豚」と同じように「犬」を避ける傾向があります。

これらを背景に、「プレッツェルドッグ」のケースに戻ると、犬肉や非ハーラル肉を使用していないにもかかわらず、マレーシア・JAKIMがムスリム観光客から苦情を受けており、「ハラール」という言葉が食べ物としての「ドッグ」という言葉と一緒にくっついているのを見て紛らわしいと感じたとのことです。

例その3:「Beer(ビール)」「Soju(ソジュ)」

2022年、インドネシアではノンアルコール・「ソジュ」の”ハラール”商品が登場しました。「ソジュ」は韓国のアルコール飲料の一種なので、ハラーム要素がないことを保証した上で、名称を変更し(詳細は後述)、かつ容器もお酒に似ていないものにしなければ、ハラール認定はできないと、MUI(インドネシア政府のイスラム機関)が述べています。

A&Wの看板ドリンク「RB」

他にも、マレーシアで人気のファストフードチェーン「A&W」は、2017年頃より看板ドリンクの「Root Beer(ルートビール)」(北米の甘い清涼飲料水)の呼び方を変えました。アルコール飲料ではないものの、名前に「ビール」(お酒)という単語が含まれているだけで、A&Wは「Root Beer」から「RB」に変更したのです。また、シンガーポール系飲料会社F&Nも、マレーシアで同社のルートビア味・ドリンクシロップを「Rut B」と名づけています。

ハラール「ラベル」重視の理由

■誤解や混乱を避けようにする

画像はイメージです

冒頭に少し触れたハラール日本製品に関する一件ですが、パッケージには「ハラールマーク」と「Pork(ポーク)」の単語が明らかに入った文言が書かれていました。すると、一部のムスリムからハラールマークがあっても「豚肉」の混入があると思い込み、ハラール性を疑う人が続出したのです。

SNSの投稿では、こんなコメントも見られました。

Kepada yg suka sgt Japanese Food. Berhati2 lah.

(マレー語→日本語訳:日本食が好きな人は要注意ですよ。)

Mereka tak menghormati Islam. sesuka hati guna tanda halal.

(マレー語→日本語訳:彼らはイスラム教を尊重していない。ハラールロゴを好きなように使っているよ。)

Udah jelas tertera PORK kok ada stempel HALAL?

(インドネシア語→日本語訳:明らかにPORKと書かれているのに、ハラール・マークがついてる?)

その他に、ハラールでない製品に「偽のハラール認証マーク」がついているなど、紛らわしいケースが稀にあります。
そうした事例があるため、ハラーム関連の名称が表示された商品を見ると、その商品のハラール性を疑い、ハラールマークが偽物であると思ってしまうのではないでしょうか。

■ ハラール認証取得への条件として

イスラム教では、常に正しく美しい言葉を使うことを大切にしています。よって、食べ物や人、製品に対して、イスラムの教えに反する不適切な言葉を使うことは避けるよう推奨されています。

イスラーム法学の観点からは、ハラールなものにハラームなものを特に指す、あるいはそれに類似した名前を付けることはNGです。「ハラームを模倣することはハラームである」という点について、全4マズハブ(イスラム法学派)の全法学者が同意しているのです。

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マレーシア・JAKIMのハラール認証ガイドラインによると、「ハム」「ラム」「ビール」「ベーコン」「チャーシュー」など、「紛らわしい」言葉を商品名に使用した場合、ハラール認証が受けられなくなることがあります。
また、インドネシアのMUI(イスラム政府機関)も、ハラール保証システム(HAS)の11項目に基づき、ブランド名や商品名に、シャーリア(イスラム法)に従わない禁止されたものや崇拝につながる名称を使ってはいけないと強調しています。つまり、酒・豚・犬およびそれらの由来、悪魔の名前(カーフィルや偽りに至るもの)、下品な言葉やポルノを示す言葉などが含まれていると、ハラール認証が取得できない場合があるのです。

名称やラベルを認証取得事項の一部として掲げているハラール認証機関はたくさんありますので、認証取得を予定している場合はご注意ください。

商品の種類にもよりますが、ムスリムはハラーム用語の使用に対して非常に敏感です。ムスリム向けの製品を開発し、ハラール認証を取得する際には、ラベルや名前の表記方法に気をつけておくと、ムスリム消費者が安心して手に取れるようになるでしょう。

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